実際に起きた凶悪事件をもとにした人間ドラマ『大悲』31mmバージョン開幕。「どれだけ願えばこの言葉は届くのだろう...」

2019年7月19日(金) 、 東京・新宿紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYA にて、 BS-TBS ・ オデッセー主催・企画・制作 の 『大悲』 が開幕した。 この日開幕したのは、 西村まさ彦 が主演する、 『大悲』31mm バージョン。

『大悲』 は、 今回の脚本・演出を務める 西森英行 による書き下ろし作品。 その内容は、 かつて、 白昼の小学校で起こった、 無差別殺傷事件がテーマ。 実際に起きたこの凶悪事件をもとに、 弁護士と被害者遺族、 二つの視点で描く人間ドラマである。

19日(金)に開幕した 31mm編 は、 西村まさ彦 が主演。 凶悪な犯罪を犯した佐久間護 (玉城裕規) を国選弁護人として弁護することになった新谷重雄が、 極刑は避けられないと認識しながらも、 なぜ、 佐久間はこのような犯罪を犯すに至ったのかを佐久間との会話劇で紡いでゆく。

新谷を演じる 西村 のセリフの量は尋常ではなく、 約2時間の公演中、 凶悪な殺人犯との緊迫した会話劇が続く。 その勢いは見るものに呼吸を忘れさせるほどの緊張感は、 かつて見たことのない舞台演劇作品となっている。

公演後の観客も、 劇場を後にしながら、 「 西村まさ彦 って、 テレビでのイメージだとコミカルな役が多いから、 イメージが変わった!」、 「あの緊張感とシリアスな 西村まさ彦 の演技が演技とは思えない緊張感」、 「舞台上行われている凶悪殺人犯との会話が、 自分もその場に立ち会って聞いているような緊迫感がすごい」と 西村 ・ 玉城 の演技に魅了された様子。 そして、 実際の事件を扱った内容に、 こういう現実があったであろうという緊迫感も今作品のみどころとなっている。

7月20日(土)から開幕 する、 『大悲」37m バージョンで主演を務める 壮一帆 も一部に出演し、 西村 と対峙するシーンも盛り込まれていることと、 実際の事件の犯人サイド・被害者サイドと双方の葛藤を見てこそ全編が成立する構成から、 必ずや両方のバージョンを確認したくなる作品に仕上がっている。

もちろん、 どちらのバージョンから先に見ても、 ネタバレで先が読めてしまうということもない絶妙な構成となっている。 公演は、 7 月29日(月)まで 上演されているので、 ぜひ、 会場に足を運んでみたい作品である。 メインビジュアルに示された、 「どれだけ願えばこの言葉は届くのだろう…」 、 その答えを探しに、 ぜひ、 紀伊國屋サザンシアター へ足を運んで損はない作品である。

出演 西村まさ彦 コメント

『大悲』の台本を初めて読んだ時、 私の演じる弁護士の男をしっかり作り上げた脚本・演出の 西森英行 さんはすごい!と、 ひたすら敬意を表しました。

この作品は実際にあった事件をベースにしています。

西森さん は脚本執筆にあたり、 ご自身で当事者に取材して、 さらに膨大な資料を読み込まれました。

今回、 この作品の台本を読んで、 報道で知っていた情報と実際とは、 かけ離れる部分があることに気づかされました。

本当のところを知るには、 自分の目で見、 足を運んでみる必要がある…「第三の目」を人は持つべきだと改めて思いました。

マスコミ報道を批判するつもりはないのです…出される情報の鵜呑みや左右されることなく、 第三の目を持って人と向き合い、 社会と向き合うことが大事なのではないか…。

この作品がそう考えるきっかけになれば、 そこに意味を持つのではと思います。

この作品は、 まもなく発生から丸18年が経とうしている、 付属池田小事件をモチーフとしています。

この事件に関して、 13年以上に渡り、 弁護士さんや被害者のご遺族、 学校関係者の皆さん、 メディア関係の皆さんなど、 事件に関係された方々に、 取材を続けてきました。

この作品で描かせて頂くことは、 センセーショナルな事件の奥で、 「語られなかったこと」、 「忘れ去られていったこと」、 そして、 「今も続いていること」。 そしてその中に、 大切な、 人間の深い内奥があると感じています。

ご本人もメディア人である 丹羽プロデューサー とご一緒させて頂いて、 この事件を多面的に描くため、 作品を鍛練し続けてきました。

この事件は実際にあった事件を下敷きにしております。

犯人や被害者家族たちはどんな事を経験し、 考えてきたのか。

作・演出の 西森さん は弁護士や被害者家族にも直接会っていたので、 いろいろ遠慮が生まれると思い。 彼が書きにくかったことを書いてもらうのが私の仕事と考えました。

もちろん取材はしたもののフィクション部分で相当に膨らませております。

ちょうど脚本の執筆中に登戸で同じような幼い小学生を狙った殺人事件が起きました。

同じようにエリート校を狙った犯行。

犯人の動機も酷似しております。

ぞっとするとともに、 歴史同様に事件も繰り返すのだと思いました。

『大悲』 はふたつの舞台からなります。

ひとつは重大事件を起こした犯人と弁護士からの目線。 もう一つは被害者家族の目線。

事件は一つですが、 見方によって感じ方も変わってきます。

© 有限会社ルーフトップ