夫名義のマンション、離婚時の財産分与で妻の持ち分はどうなる?

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、現在、夫との離婚を考えているという32歳の女性。結婚後に夫名義で購入したマンションの持ち分は、離婚するとどうなるのでしょうか。FPの伊藤英佑氏がお答えします。

結婚後に夫名義でマンションを購入しました。住宅ローンは夫が全額返済しています。その場合でも、離婚時には共有財産にあたりますか。実質、夫が負担しているので、取り分は「夫:10、妻:0」となるのでしょうか。現在、離婚を検討しています。アドバイスよろしくお願いします。

〈相談者プロフィール〉
・女性、32歳、既婚(夫:32歳)、子供なし
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(マンション)
・毎月の世帯の手取り金額:55万円
・年間の手取りボーナス額:100万円
・毎月の世帯の支出目安:40万円

【資産状況】
・毎月の貯蓄額:15万円
・現在の貯蓄総額:600万円
・現在の投資総額:350万円
・現在の負債総額:3000万円(住宅ローン)


伊藤:ご質問ありがとうございます。結婚後に購入されたマンションについて、離婚した際、財産の権利はどうなるのかお答えします。

離婚時、共有資産はどう分ける?

離婚される場合の夫婦の共有財産は、婚姻生活中に夫婦で協力して築き上げたものとされ、財産分与されます。

財産分与の割合は、財産の形成や維持に夫婦がどの程度貢献したのかという点に着目して決めていくことになりますが、財産分与の基本的な考え方としては、分与の割合はそれぞれ夫婦半分ずつが一般的だと思ってよいでしょう。

そのため名義のいかんにかかわらず、夫婦のそれぞれの資産の合計で結婚後に増加した資産額は「夫婦の共有財産」として、半分ずつを財産分与で得る権利があり、協議により合意ができるのであれば、双方の話し合いにより決まることになります。

ご質問者の場合、現在の住宅ローンが3000万円ですので、マンションの現在の価値が仮に3500万円だとすると、資産価値からローンを引いた500万円がマンションの財産額となります。また、貯金と投資で資産が計950万円あります。結婚時にお持ちの資産額が仮に450万円だったとすると、結婚後に増加した500万円が共有資産となると考えられます。

結婚時にお持ちだった財産額によって変わりますが、上記のような場合だと「マンション500万円」と「貯金と投資500万円」を夫婦で分けることになります。「マンション」「貯金と投資」をそれぞれ半分ずつというのもあるかもしれませんが、マンションに居住を続ける方がマンションを得て、貯金と投資はもう一方というのがわかりやすいと思います。

どちらもマンションへの居住を続ける予定がなければ、マンションを売却しキャッシュを財産分与で分けるということも考えられるかと思います。

ローンが残る夫名義のマンションを妻が取得するには?

現在のマンションの名義は夫になりますので、夫が今後も居住し続ける前提で財産分与によりマンションを取得するのなら、財産の分け方に大きな問題はないと思いますが、ご質問者がマンションに居住を続ける場合は離婚後のローンの返済などをどうするか検討する必要があります。

住宅ローンが残っていても不動産の名義を変えることは可能ですが、住宅ローンを貸している金融機関の許可がなければ、ローンの債務者名義を変更することはできません。ご質問者の収入状況等により、ローンの信用力があるかどうか、また返済をご自身でしていくことになりますので、このあたりをクリアできるかがポイントになるかと思います。

マンションに住むのはご質問者で、ローンの支払いは元夫が続け、賃料相当額をご質問者が支払うことも考えられはしますが、心情面や離婚後の長い間に状況も変わることなどを考えると、問題が起きやすいので得策ではないかもしれません。

マンション価格が購入時よりも値上がりしていたら要注意!

年間110万円以上の財産を個人間で移転すると贈与税が掛かりますが、財産分与の場合には贈与税は掛かりません。

ただし、財産分与の額が片方に不当に多過ぎる場合や離婚が贈与税や相続税を免れるためにされたと認められる場合は、贈与税が課税される可能性がありますが、そのような例外的なものでなければ問題ないでしょう。

また、財産分与で名義を変更する場合には不動産取得税も掛かりません。

ただ、「財産分与時のマンションの時価」が「マンション取得時の価格(建物は減価償却後の価額)」よりも上がっている場合には、利益がでますので、財産分与をした夫に譲渡所得税がかかります。マンション価格が購入時より大きく値上がりしている場合は注意しましょう。「居住用不動産を譲渡した場合の3000万円の特別控除」は、親族への譲渡には適用できません(離婚届を提出してから不動産の名義を変えれば可能)。

以上、財産分与の基本的な考え方やポイントについて回答差し上げました。

話し合いで決着がつくのでしたら財産の分け方は協議離婚で決めればいいかと思いますが、問題がある場合やマンションの名義を変更する場合で気になる問題がある際には、法律問題は弁護士に、税金問題は税理士などにご相談するなどして進めるのがいいと思います。

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