急速に広がる電子マネー、親はどう受け入れる?

新年号が令和に変わり、日銀券も新しく生まれ変わることになりました。

現金はまだまだ身近なお金ですが、今秋に予定されている消費税の増税に伴い電子マネーの普及はこれまでにない速さで広がりそうです。

昨今、問題も起きている電子マネーですが、だからといってこの流れは止まらないでしょう。


電子マネー決済はドンドンふえている

総務省による「平成30年版情報通信白書」では、電子マネーの決済額は、2017年時点で約5.2兆円にものぼり、家計が費用を負担する「民間最終消費支出」の1.7%を占めているそうです。あまりにも天文学的数字すぎてなかなかピンときませんね。

では、個人の家計ではどれくらい電子マネーは普及しているでしょうか。我が家の場合に置き換えてみたところ、家計消費のうち50%以上は電子マネーです。我が家が電子マネーを利用する家計の割合は、国の統計と比較するとだいぶ高いようです。

電子マネーの普及率も2008年から比べると、なんと約5.6倍にも増えています。

情報通信白書平成30年版(日本銀行「電子マネー係数を元に作成」)/総務省

電子マネーによる決済がふえたのは、私たちの環境を取り巻く経済や社会にさまざまな変化がでてきたからかもしれません。

以前は、会社と会社間の取引(BtoB/B=企業Business)や、企業と私たち消費者間の取引(Bto/C=消費者Consumer)が主だったに対して、現在は、もっと複雑に絡み合っているようです。

たとえば、消費者から企業へ向かう取引(CtoB)もあれば、個人同士の取引(CtoC)もあります。また、産業間においてもその垣根を飛び越えて様々な発展が考えられます。

このような背景がICTやデジタル化を発展させてきた要因になっています。

X-tech(クロステック)という言葉がありますが、これはインターネットを活用してこれまでの産業に新しい価値やしくみをつくることです。

たとえば、金融とtechと合わせて、Fintech(フィンテック)と呼んでいます。このほかにも、教育ではEdtechとか、農業ではAgritechと言うそうです。

その産業の頭文字にtechを付ければいいので、我が家のデジタル化を考えてみました。「Kajitech」なんてどうでしょう。わかりやすくKaji=家事としましたが、houseworkがデジタル化してもっと便利になったらいいですね。

電子マネーに触れる年齢が低くなっていく

子どもに渡すおこづかいについては現金という家庭が多いと思います。そのうち、おこづかいも電子マネーで渡す時代になるのでしょう。おこづかいにtechが付いた新しい呼び名ができるのかもしれませんね。

スマートフォンも小学生が普通に持っている時代ですから、子ども達も財布を持たずに、スマホでチャリ-ンと決済をするようになります。

まもなく2022年から成人年齢が18歳になります。彼らはクレジットの契約も自分の意志でできるようになります。電子マネーに触れる機会が、ますます低年齢化していくわけです。

しかし、この世から現金が全く姿を消してしまうわけではないので、まだ、その雄姿(現金世代にはたまりません)を拝めるうちは、子どもに現金も活用しながら、お金の教育ができたらいいのではないかと思います。

お金にまつわる機会は、やはり買い物です。買い物に子どもを連れていくことで、野菜やお肉などの市場の価格を自然と知る機会になります。しかし、現在は、ネットスーパーなどで買い物をすます家庭も多いので家庭によっては難しくなってきています。

そういえば、我が家でも、週末に買い物をするということはなくなりました。これも、Kajitechの一部になりますね。買い物の時間を有効活用するために、食材は生協で注文し、決済はクレジット払いです。

家計の決済のデジタル化は結構進んでいますが、子どものおこづかいはかろうじて現金を渡す家庭はまだまだ多いです。

現金取引で経験値を積む

子どものおこづかいの管理は、まずは現金での取引を経験してから、電子マネーにトライできるといいと思います。現金には紙幣や硬貨がありますが、それぞれがデザインやカタチ、重さ、手触りが違う実物マネーです。

電子マネーは、お金の価値をデジタル化した数字が表示されます。入出金などの決済の大きさも数字で把握しなければなりません。

現金を使って買い物をすると、500円玉を使えば100円や10円など、また、千円札を使えば500円や100円などの硬貨が返ってくることを体験できます。

また、現金での決済はお釣りの間違いにも気をつけなければなりません。自分の大切なお金が1円でも減ることがないように緊張して取引をするようになります。

おつかいを頼むのも有効です。お釣りのないおつかいや、お釣りのあるおつかい、さらに、料理のメニューを決めて、材料を買ってきてもらうちょっとレベルの高いおつかいも我が家では実践していました。本当に、現金が使えなくなるまでは、できる限り、現金にも触れさせてあげてください。

この経験は、電子マネーを使用するようになったときに経験値としてのこります。クレジット決済をする際に、お店の人が支払いの金額を間違えないか(我が家のエピソードですが、1980円を198万円と間違えられたことがあります)、または、自分で支払いの金額をタップする際にも注意を払うようになります。お金は現金でも電子でも、同じ重みなのです。

お金のデジタル化が急速に進むなかで、親がしなければならないことは、子どもには現金取引の経験をさせながらも、親はそのお金の進化に対して苦手意識を持たないことです。親が利用していない電子マネーを、子どもも利用しないとは限らないからです。

「tech」の時代は、親も子どもも電子マネーについて前向きに学んでいく気持ちが大切だと思います。

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