いくらあれば“余裕ある暮らし”ができる?「つもり家計」で練習

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。

今回の相談者は、共働きの20代夫婦。この先、子どもを2人授かった時にいくらあれば「余裕のある暮らし」ができるのか知りたいといいます。FPの前野彩氏がお答えします。

現在、夫婦共働きで夫の年収は350万円、妻が400万円です。子どもを2人持ちたいと思ったとき、どれくらいの収入、貯蓄があれば余裕を持って子育てできますか? 万が一、妻が身体を壊して働けなくなる可能性も考慮しておきたいです。子育てにかかる費用、自治体等で受けることができる補助金等についても教えてください。

〈相談者プロフィール〉
・女性、25歳、既婚(夫:26歳)、子どもなし
・職業:会社員
・居住形態:持ち家(戸建て)
・居住地:京都府
・毎月の世帯の手取り金額:40万円
・年間の手取りボーナス額:100万円
・毎月の世帯の支出目安:35万円

【資産状況】
・毎月の貯蓄額:5万円
・現在の貯蓄総額:200万円
・現在の投資総額:なし
・現在の負債総額:1150万円(住宅ローン)

【支出の内訳】
・住居費:7万円
・食費:4万円
・水道光熱費:1.5万円
・教育費:2.5万円
・保険料:6万円
・通信費:1万円
・車両費:2万円
・お小遣い:6万円
・その他:5万円


前野:25歳ですでにマイホームを購入し、住宅ローン残高は1150万円とのこと。無理のない住宅ローンを組んでいらっしゃいますね。

「いくらの収入と貯蓄があれば余裕を持った子育てができるか」というご相談において、カギを握るのは、収入よりも支出です。余裕を持った子育ての中身を具体的に考えていきましょう。

子どもが生まれた「つもり家計」で予行演習を

毎月5万円を貯蓄できていますが、お子さん2人を希望されるのなら、予行演習として“子どもが生まれたつもりの家計”でやってみませんか?

子どもが生まれると、おむつやミルクなどの養育費として子ども1人あたり月1万~1.5万円ほどのお金がかかりますし、空調管理や洗濯物の増加などで、水道光熱費も増えます。また、妻が職場復帰する際には保育園を利用しますが、その保育料は原則として市町村民税の所得割で決まります。

参考までに、京都市には22段階の区分があり、お二人の場合は1ヵ月あたり4万~5万円の保育料となる可能性があります。すると、3歳から無償化が始まるとはいえ、0歳時で保育園に子どもが通うときには、養育費と保育料を合わせると、毎月5万円前後の支出が発生することになるため、今のままの家計では毎月の貯蓄ができなくなってしまいます。

家計を拝見すると、今の「教育費」となっている支出は、お二人のスキルアップや趣味の習い事などではないかと想像します。すると、教育費にお小遣い、その他を合計すると、お二人が自由に使っているお金は1ヵ月あたり13.5万円ありますから、この内容を吟味して、子どもが生まれたつもりで貯蓄を始めてみましょう。

何をもって「余裕を持った子育て」とするのか、具体的に話し合う

「余裕を持った子育て」の“余裕”という価値観や金額は人によって異なります。私立学校に通わせることなのか、それとも子どもが習い事をしたいと言ったときに通わせられることなのか、それとも家族で旅行を楽しむなどの時間的なゆとりのことなのか、など様々です。

ご相談者さんにとって、どういう子育てが「余裕がある子育て」なのか、あるいは「自分が望む子育てに必要なお金はいくらぐらいかかるのか」ということを、具体的に夫婦で考えてみてください。

子どもの教育費については、次の表をご参考ください。

もしも妻が働けなくなったら…

将来、もしも奥様が体調を崩し、仕事ができなくなったときのことを考える場合、まずは国の保障制度を使います。

健康保険からは、最長1年6ヵ月、給料の約3分の2の「傷病手当金」を受け取ることができます。その後も仕事や生活をすることが難しい場合は、障害の状態に応じて「障害年金」を申請します。最も重い障害等級1級の場合は、障害基礎年金として約98万円(定額)、障害厚生年金は約60万円(人によって異なるため、勤続年数3年、平均年収350万円で試算)と配偶者の加算約22万円があるため、合計約180万円の障害年金を受け取ることができます。

また、住宅ローンを借りている人が高度障害状態になった場合は、住宅ローンは団体信用生命保険(以下、団信)で完済されます。団信の中には、がんと診断されたり、脳卒中や急性心筋梗塞などで所定の状況が続いた場合にも保険金で支払われるような三大疾病特約付きもあるため、その場合は、住宅ローンの残高が半分に減額されたり完済されたりします。

月額6万円の保険料については、中身がわからないためアドバイスが難しいところですが、遺族年金や障害年金、高額療養費や傷病手当金、団体信用生命保険などを確認して、過不足を確認してみてください。

自治体サポートは必ずチェック!

例えば子どもが受診したときの医療費の自己負担は、本来は、小学校に入るまでは医療費の2割負担、それ以降は3割負担です。ただし、多くの自治体で乳幼児・こども医療費助成制度があり、医療費負担を少なく抑えることができます。

現在は京都府にお住まいとのこと。京都市では「子ども医療費支給制度」として、中学校卒業までの子どもについては、入院時の負担は1ヵ月200円、通院は、2歳までの子どもは月200円、3歳~中学校卒業までは月3000円までの支払いで受診することができます。京都市は所得制限がないため、共働きのご相談者さんも使うことができます。また、京都市と道路を1本はさんだ隣の宇治市では、中学生までなら外来受診も1ヵ月200円で済みます。

このように、子どもに関する自治体サポートは、自治体によって異なります。子供が小さいときとシニアになってからは、自治体サービスと関わる機会が増えるため、自治体のサイトは宝の山。お住まいの自治体のサイトを確認したり、自宅に届く広報誌をチェックしたりする習慣を付けましょう。

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