残された田んぼ、地域住民で管理 高千穂6人殺害

 「まじめに農業をしていた保生さんの遺志を継ぎたい」。殺害された飯干保生さん=当時(72)=が高千穂町押方・山附集落に残した田んぼでは24日、ヒノヒカリが盛夏の日差しに青々と輝いていた。
 昨年11月、一家ら6人が殺害され、1人が自殺した事件は、晩秋に染まる集落に深い影を落とした。「地域で前を向いていくしかなかった」。山附公民館の佐藤公也館長(63)は振り返る。事件後、集落では飯干さんの親族を交えた話し合いがあり、残された田んぼを荒らさないよう、地区住民でつくる集落協定で管理していくことを決めた。
 約60アールの田植えなどを付近の住民5人が中心になって進めた。寒暖差や清らかな山の水が育むヒノヒカリは評判が高く、手入れの行き届いた飯干さんの田んぼを耕作放棄地にするわけにはいかなかったからだ。苗は順調に成長し、間もなく穂が膨らむという。収穫は管理費に充て、一部は遺族に届ける。
 また、事件現場となった飯干さん方は捜査の終結を待ち、取り壊す意向だという。
 犠牲となった唯さん=同(7)=と同じ小学校に子どもが通う女性は「子どもたちの動揺もようやく収まってきた。しかし、子どもまでどうして、という思いは消えない」と沈んだ声だった。

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