養殖クロマグロ からすみ風に 県総合水試が技術開発 卵巣を有効活用 藤井からすみ店(長崎)が商品化

藤井からすみ店が販売する「まぐろのからすみ」(左)と「まぐろ真子パウダー」

 生産量日本一を誇る長崎県の養殖クロマグロ。出荷時に廃棄される内臓を有効活用しようと、県総合水産試験場は、クロマグロの卵巣をからすみ風に加工する技術を開発した。藤井からすみ店(長崎市)は技術を応用して2商品を製品化し、業務用に出荷。関東、関西方面の料理店を中心に需要が伸びているという。
 県によると、本県の養殖クロマグロの2018年の生産量は6502トンに上り、14年から5年連続で日本一。生産量の増加に伴い、出荷時に除去される内臓も大量に発生している。内臓は魚体重量の約15%を占め、経費をかけて廃棄されているという。
 試験場は本県の特産品で、ボラの卵巣で作るからすみの製法に着目。16年度から18年度まで、長崎大水産学部やからすみ製造業者、養殖業者と協力して、加工技術の開発に取り組んだ。同様の取り組みは鳥取県などが先行しているという。
 養殖クロマグロの卵巣はボラよりも大きい上に膜が厚く、酸化して味の劣化を招く脂肪が膜の周りに多く付着しているという。そのため今回の技術では、膜を除去して卵巣の中身だけを使用。塩を加えて熟成、乾燥させ、粉末化することを基本製法とした。粉末化することで、調味料としての利用が多い飲食店の需要を取り込む狙いもある。
 通常のからすみは1カ月以上かけて製造し、その過程でうま味に関与する遊離アミノ酸を増加させるという。今回の技術による製造期間は1週間程度と短いが、最適な温度と日数による熟成工程を設けることで、遊離アミノ酸を増加させることに成功した。
 藤井からすみ店は粉末状の「まぐろ真子パウダー」と、従来のからすみと同じ製法で作った「まぐろのからすみ」を販売。福島正実社長は「原料が安く手に入るため、通常のからすみより安く提供できる。味はボラより油分が少なくあっさりしているが、うま味はしっかりある」と評価する。
 長崎市内の他の業者でも製品化に向けて試作が続いている。試験場は「本県らしい加工品の生産につながる技術。今後も技術の普及と支援を進めて、商品化につなげたい」としている。

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