都市対抗野球の表彰選手はロッテとオリックスに多い? 過去10年を振り返る

オリックス・福田周平【写真:荒川祐史】

今大会では元DeNAの須田が橋戸賞を受賞

 7月13日から25日まで行われた「第90回都市対抗野球大会」では、各地方大会を勝ち抜いた企業が東京ドームに集い、社会人野球の頂点を争った。特徴的な応援もさることながら、毎年ハイレベルな戦いが繰り広げられることで人気も根強い。

 現在、パ・リーグで活躍している選手の中にも、この舞台を経験した社会人出身者は少なくなかった。今回は、過去10年の大会で表彰されたパ選手の今季の活躍を紹介していく。※成績は2019年7月25日試合終了時点

 まずは大会MVPにあたる橋戸賞受賞者から見ていく。この賞は都市対抗野球大会の創立者である橋戸信氏に由来し、優勝チームから1名選出される。今年の大会では、全5試合に救援登板してチームを初優勝に導いた元DeNAの須田幸太投手(JFE東日本)が受賞した。過去10年でその栄誉にあずかった現役選手はセ・パに1名ずつと、意外に少ない。

パ・リーグ唯一の受賞者はオリックスの福田、打率.550をマークしチームの優勝に貢献

 パ唯一の受賞者は、オリックスの福田周平内野手だ。東京都代表NTT東日本に所属し、第88回大会に出場。打率.550をマークし、チームの優勝に大きく貢献した。その後、2017年のドラフト会議を経て、オリックスへ入団している。

 そんな福田はここまで83試合に出場し、打率.257をマーク。ルーキーイヤーだった昨年の打席数を上回り、2年目のジンクスを感じさせない存在感を見せている。さらに大会期間に入ってから、3試合でマルチ安打を記録。かつて輝きを放ったこの季節をきっかけに、さらなる飛躍を見せてくれそうな予感だ。

 次に、敢闘賞にあたる「久慈賞」の受賞者だ。これは、1934年の日米野球で全日本チームの主将を務めた名捕手・久慈次郎氏に由来しており、原則として準優勝チームから1名選出される。今大会では、社会人野球14年目のベテラン・佐竹攻年投手(トヨタ自動車)が受賞した。

 過去10大会で同賞に輝いたパの現役選手は、第82回大会の西武・小石博孝投手、第83回大会のオリックス・吉田一将投手、第86回大会のロッテ・酒居知史投手の3選手。セ・リーグには、第76回大会の梵英心内野手を最後に、久慈賞受賞者は14年間にわたって入団していない。

 ではここでは、第86回大会で久慈賞と若獅子賞をW受賞した酒居に注目していこう。2016年のドラフトでロッテから2位指名。ルーキーイヤーから即戦力右腕として5勝を挙げると、2年目は主に先発として登板した。

 3年目の今季は、ここまで36試合に登板し、防御率4.86、16ホールドの成績を残している。一度は不調から二軍落ちを経験するものの、今大会中の7月15日に復帰。中継ぎとして4試合に登板した。

新人賞=「若獅子賞」の獲得はNPBでは12名

 最後に紹介するのは、新人賞にあたる「若獅子賞」だ。大卒の場合は1年目まで、高卒の場合は2年目までが選考対象であるが、人数の規定はなく、同時に複数人が選出されることもある。今大会では、今川優馬外野手(JFE東日本)、峯本匠内野手(JFE東日本)、岡直人投手(日立製作所)が選出された。

 過去10年、この賞を受賞した後にNPB入りを果たしたのは12名で、そのうちの7名がパ・リーグに進んでいる。

 第81回大会では、後にオリックスに入団する安達了一内野手と、小島脩平内野手の同級生2選手が受賞。第83回と第86回大会ではともに「久慈賞」受賞経験のあるオリックス・吉田一将と、ロッテ・酒居が選出された。また、第87回ではロッテの藤岡裕大内野手と菅野剛士外野手が受賞している。

 中でも注目したいのは、オリックスで三塁手のスタメンを勝ち取った小島。ルーキーイヤーの2012年シーズンから途絶えることなく1軍出場しているものの、規定打席に乗ったシーズンは一度もない。

 8年目とベテランの域に入り始めた今季は、代打として高打率を残すほか、内外野をこなすユーティリティープレイヤーとしてもチームに欠かせない存在となっている。大会会期中もスタメンに名を連ね続け、社会人時代に所属した住友金属鹿島(日本製鉄鹿島)が惜しくも敗れてしまった7月20日の埼玉西武戦では、本塁打を放つ活躍を見せた。

 過去10大会での受賞者をまとめると、ロッテとオリックスに選手が集中していることが分かる。次に行われるJABA本戦は、京セラドームでの社会人野球日本選手権大会。2019年度のドラフトでも、本大会の表彰選手からNPBプレイヤーが誕生する可能性はある。社会人野球の舞台にも注目し、今後のチームを担うかもしれない選手たちの雄姿を見れば、プロ野球の楽しみ方もまた新たに増えるはずだ。(「パ・リーグ インサイト」須之内海)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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