やまゆり園事件に社会はどう向き合ったか 「共生」と地域移行を考える集会

障害者が施設ではなく地域で暮らすための方策について話し合った集会=27日、横浜市中区の市健康福祉総合センター

 障害者19人が殺害された津久井やまゆり園事件から3年となったのに合わせ、障害者が施設ではなく地域で暮らすことの意義や方策について考える集会「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」が27日、横浜市中区で開かれた。事件が投げ掛けた問いに施設、地域、社会はどれだけ向き合ってきたか-。登壇した識者や当事者から疑問が相次いだ。

 「『ともに生きる社会』を考える神奈川集会」実行委員会の主催で、約280人が参加した。

 入所施設を出て地域で暮らす先進事例として知られる長野県の県立知的障害者施設「西駒郷」の取り組みについて、中心的な役割を担った元同県職員山田優さんが講演。「神奈川県は事件を経てやまゆり園入所者の意思を尊重した取り組みを進めているとしているが、(元施設職員による)事件はなぜ起こってしまったのかの検証がまず必要」と指摘、入所施設のありようを踏まえた事件の背景が解明されないまま園の再建が進む現状を批判した。

 地域生活への移行については「そもそも障害者が入所施設に集められてなぜ暮らさざるを得ないのかが常に問われなくてはならない」と問題提起した上で、「入所者が暮らし方を決める上では、本音を語れる関係づくりが支援者には求められている」と語った。

 続いて、NHK・Eテレの番組「バリバラ」のコメンテーターとして知られる身体障害当事者の玉木幸則さん、福祉研究者として西駒郷の取り組みを調査した大阪府立大准教授の三田優子さんと山田さんが鼎談(ていだん)した。

 玉木さんは「地域での生活は、グループホームが終着点ではない。本人がどこで、誰と、どんな暮らしをしたいのかを探り続けることが大事」と強調。三田さんは「その人らしい暮らしをつくっていくためには、障害者の本心を聞き取れるかどうかにかかっている。入所施設で暮らす当事者の苦しみや悲しみにどこまで向き合えているか、支援者の側こそ問われている」と話した。

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