教え胸に恩師支える 海星・井手口、山崎両コーチ 苦しい戦いも指導“結実”

5年ぶりの優勝を決めて加藤監督(後列左)と集合写真に納まる山崎コーチ(後列右)と井手口コーチ=県営ビッグNスタジアム

 ノーシードから5年ぶりの頂点に返り咲いた海星。チームの浮き沈みを知るOB2人がそれを支えた。30歳の井手口ヘッドコーチと34歳の山崎投手コーチ。「ぶれずにやる」。恩師である加藤監督の教えを胸に、選手たちと接し、時には厳しい言葉もかけながら、チームのために汗を流し続けてきた。
 2人の母校での実績は対照的だ。山崎コーチは2002年チームのエースで夏の甲子園に出場。勝ち星も挙げた。一方の井手口コーチは06年チームで二塁手。夏は初戦で佐世保実に敗れた。「加藤先生が罵声を浴びていた」と振り返る。
 山崎コーチは関東の大学を卒業後、海星の職員となった11年から指導。14~17年は中学硬式野球の長崎海星リトルシニアの監督を務めた。決勝でスタメンだった大串、松尾倫、高谷、浦田、太田の5人は当時の教え子だ。
 同じく大学卒業後、長崎市内の会社に勤めていた井手口コーチは14年からグラウンドに立った。その夏、甲子園に出場。「自分の時は程遠かった場所。感動した」。本格的に指導を続けるため、通信教育で教員免許を取り、今年から非常勤講師になった。
 常に甲子園出場を期待される伝統校。今季は結果が出ずに苦しんだ。昨秋、今春の県大会はともに3回戦でサヨナラ負け。井手口コーチはうつむく主将の坂本を「みんな信頼している。自信を持っていけ」と激励した。「監督が何を考えているのか、分かりやすく伝えるのが役目」。自らの仕事を真摯(しんし)にやり続けた。
 迎えた夏の大会。試合を重ねるたびに選手たちが成長した。決勝は2人ともバックネット裏で観戦。投打のかみ合った快勝に胸を熱くした。
 試合後の閉会式。加藤監督が「(今大会)長かったなあ」とつぶやいた。激しく打ち合った波佐見戦、タイブレークまでもつれた長崎日大戦…。苦しい戦いを思い出し、井手口コーチは「そうですね」の言葉に実感を込めた。信頼でつながった師と教え子。選手とともに記念写真に納まる日焼けした顔は、晴れやかだった。

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