鎮西学院 後輩へ託す夢 力出し切ったバッテリー

【決勝、海星―鎮西学院】3回表に先制点を許した鎮西学院。先発楠本(左)に声を掛ける捕手西山=県営ビッグNスタジアム

 直接、言葉にはしていないが、思いは同じだった。鎮西学院のバッテリーの楠本と西山。「今までありがとう」。1年の秋から組んできたコンビはこの日、最高の舞台で最後の時を迎えた。
 意見が合わないこともあった。でも、ある時から西山は「宏武(楠本)が自由に投げられるように支える側に回った」。すると、楠本は「投げやすくなった」。2年の春、2人の背中には「1」と「2」が付いていた。
 決勝前夜。「ナンバーワンバッテリーになろう」。楠本は西山にLINE(ライン)を送った。「よっしゃ、なろう」。西山も送り返した。その誓い通りに、西山は楠本を支え続けた。失点しても、楠本の武器である「真っすぐでいこう」と背中を押した。
 楠本も連投で体は重かったが、一段ギアを上げた。四回には自己最速タイの144キロをマーク。点差を広げられた六回、初戦から西山に投じてきた623球目を最後にマウンドを降りたが、2人で培ってきたすべてを、出し切ることはできた。
 残念ながら、結果は出なかった。それでも、2人には感謝しかなかった。「きょうは宏武の誕生日。最高のプレゼントをあげたかった。でも、最後まで笑顔で投げてきてくれてうれしかった」(西山)、「ここまで来られたのは西山のおかげ。楽しかった」(楠本)
 表彰式後、2人はエラーで失点に絡んだ後輩の山口を囲んだ。「来年、頑張れよ」。そう言って肩を抱いた。一緒に追ってきた夢を、後輩へ託した。最後は2人とも、笑顔だった。

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