日本人が白いクルマをこよなく愛する理由とは?|ボディカラーは決まって白だった時代

トヨタ 歴代マークX(5代目 1984年 マークII) 2019年12月をもって生産終了

クルマのカラー=白だった時代

これからクルマを手に入れようとするユーザーにとって、ボディカラー選びは大問題だ。自動車メーカーも、カラフルなボディカラーを用意してクルマのイメージアップを狙うのだが、少し昔、ホントに白いクルマしか売れない時代があった。

それは、日本経済が間もなくバブル突入という1980年代半ばのこと、ブームの引き金はトヨタ・マークIIハードトップだった。

流行というのはいつも同じで、正確にここからとは判然としない。ただ、84年に五代目70系マークIIが発売されると、白のハードトップモデルが売れ始めて、一年もするとマークIIハードトップはベストセラーになってしまう。マークIIハードトップは、確かにスタイリッシュなセダンだったが、そのほとんどが、スーパーホワイトという白さ際立つボディカラーだったのだから凄い。

もちろん、もともと白は一定の人気のあるカラーだったし、ことに高級セダンなどに多く用いられていた。それがマークII人気に引っ張られるように、各社が白をイチオシにするようになり、最終的にはファミリーカーや軽自動車まで白ブームが及ぶ。「白いボディじゃないとリセールバリューが下がる」という、セールストークの決まり文句が生まれたのもこの頃だった。

白いクルマブームは、バブル経済の崩壊に合わせるように縮小して行くのだが、では何故ここで白だったのだろう?

白ボディが流行ったのは白物家電との関係性も

1986年式 マークIIハードトップ グランデ ツインカム24(GX71型)/トヨタブース【オートモービルカウンシル2019】

当時よく言われていたのが、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの白物家電との関連だ。

白物家電の白は清潔さを象徴する色で、今でも、台所や風呂まわりの電化製品には白いものが少なくない。とくに冷蔵庫と洗濯機は、昭和の高度経済成長期の三種の神器でもあり、白物家電は豊かさの象徴だったのだ。そして、新しい時代の豊かさを象徴するクルマは、究極の白物家電であり、だからこそボディカラーも白というわけだ。マークIIハードトップのスーパーホワイトなどは、まさに清潔感を絵の具に溶いたような白だった。

いささか強引な説明だが、白無垢や白装束など、人の一生のうちに何度か白を意識する日本で、当時のクルマは一生の大きな買い物だった。それに、これから豊かになろうというバブル直前の盛り上がりや、メンタリティを考えても、その強引な説明は、意外に核心を突いている気もするのだ。

いまだに白人気は続いているが再びカラフルにもなってきた

アルファード/ヴェルファイア2018年一部改良モデル

今、白いボディカラーは、日本では高級パーソナルカーに使われることが多くなって、かつての白ブーム以前に戻った感がある。それは、時代は繰り返すということなのだろうが、変わったこともある。個人的に一番にしたいのは、白の塗装の質が画期的によくなったこと。なにしろ、当時の白いクルマは、水アカが綺麗に落ちにいし、真っ白に磨き上げるのは相当な苦労が必要だったのだ。

ちなみに、平成から長いブームとなったミニバンで、ホワイトが昔ほど大流行しなかったのは、白いボディだと商用バンに見えてしまうというのが大きかったようだ。それに、白は膨張色、つまり大きく見せる色だから、大きなミニバンがより大きく見えてしまうわけで、目の前に来るとけっこう圧迫感がある。メーカーが、プレステージ性の高いミニバンほど、そろってブラックやグレーをメインカラーしていることも、そのことを裏付けていると思う。

[筆者:永田 トモオ]

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