プーチン反体制派にまた毒物投与疑惑 著名ブロガー、首相の汚職など告発

By 太田清

2018年1月28日、モスクワで警察に拘束されたナワリヌイ氏(中央)(AP=共同)

 モスクワでの大規模デモを呼びかけた事を理由に拘束されたロシアの反プーチン政権政治勢力指導者で、ブログで政財界の汚職を告発することで有名なアレクセイ・ナワリヌイ氏(43)が収監先で体の不調を訴え28日、病院に救急搬送された。当局は「アレルギー症状」と説明しているが、同氏は過去に同症状を起こしたことがなく、同氏と面会しようとした支持者の医師らは「毒物にさらされた可能性がある」と指摘した。独立系ニュースサイト「メドゥーザ」や英字サイト「モスクワ・タイムズ」などが伝えた。

 ロシアに関する毒物使用疑惑としては、ロシアの情報機関である連邦保安局(FSB)元職員で英国に亡命したアレクサンドル・リトビネンコ氏が2006年、放射性物質ポロニウムを投与され死亡。英司法当局は後に旧ソ連国家保安委員会(KGB)元職員らの犯行と断定、国際手配したがロシアは元職員らの引き渡しを拒否した。最近では17年2月、著名な反体制政治活動家、ウラジーミル・カラムルザ氏が入院し一時昏睡状態となった際にも、毒殺未遂との疑いが指摘された。 

 デモは9月のモスクワ市議選に出馬予定だった独立系候補が出馬を阻まれたことに反発して27日、野党支持者ら3500人以上がモスクワ市役所前で抗議集会を開こうとして治安当局と衝突。警官隊は当局が許可していないとして市役所周辺から市民を排除し、1300人以上(野党系サイト)を拘束した。 メドゥーザによると、これほど大規模なデモにもかかわらず、国営、政府系の3大ネットワーク主要ニュース番組はまったく報じていない。

 ナワリヌイ氏は24日に拘束され、30昼夜拘束の決定を受け収監されていたが、「顔が腫れ肌が真っ赤になり」(ナワリヌイ氏の報道担当者)、病院に搬送された。支持者の医師らが病院でナワリヌイ氏に面会しようとしたが阻止されたものの、同氏の外見を観察したところ、アレルギーではなく毒物による中毒と症状が一致していたという。医師はナワリヌイ氏のシャツと毛髪を入手し、欧州の検査機関に送る意向を明らかにした。 

 ナワリヌイ氏は弁護士であるとともに著名ブロガーで、汚職告発団体「反汚職基金」を立ち上げ、政府高官の汚職を調査。17年3月には、プーチン氏と大統領、首相職を「交換」した元大統領で首相のメドベージェフ氏が不正に得たとする不動産などを告発する動画をネットで公開、大きな反響を得た。これまで何度も反プーチン集会を組織、逮捕・拘束されている。 (共同通信=太田清)

© 一般社団法人共同通信社