横浜市交通局は29日、6月に起きた市営地下鉄ブルーラインの脱線事故に関する調査報告書を公表した。線路上に放置された装置に電車が乗り上げた事故原因について、事故調査委員会は職員が漫然と点検し、作業手順も明確になっていなかったと指摘。事故による損害額は約4億700万円に上るとの見通しも示した。
放置されたのは、工事用車両を移動させるために使う「横取り装置」。動かすにはピンを抜く必要があり、ピンを抜くと、ブザーや警告灯が作動する仕組みになっている。
報告書によると、6月5日の営業運転終了後、職員3人が3カ所の装置を点検した。その際、1カ所の装置が線路上に固定されたままの状態にもかかわらず、50代の責任者はピンを挿入。警告灯などが消えたため、3人は作業を終えた。最終確認もしなかった。
調査委は、職員が装置の危険性を十分理解せずに慣例的に点検し、責任者も自らの役割を認識していなかったと指摘。点検に関する手順書が存在せず、現場の作業実態を組織として把握していなかった点も問題視した。
被害額のうち、車両関係は3億1900万円で、レールの修繕など施設関係は8800万円。加えて代行輸送バスや振り替え輸送に約2500万円かかったとしている。
調査委は7月1日に設置され、城博俊局長が委員長に就任。会合を4回開いて報告書をまとめた。29日に開かれた市会水道・交通委員会で市側が示した。