ロボットスーツ、海老名市消防導入 患者搬送をアシスト

腰への負担を軽減するロボットスーツを実演する海老名市消防本部の女性隊員=同市大谷

 救急隊員の身体的負担の軽減につなげようと、海老名市が今月、患者搬送時の力仕事などをアシストするロボットスーツを県内で初めて導入した。女性隊員が男性隊員との体力差を補い、活動の場を広げることも狙いで、自治体消防での導入は、茨城県つくば市に続いて全国2例目という。16日から出動現場でも活用しており、29日に報道公開した。

 導入したのは、筑波大発のベンチャー企業「サイバーダイン」(つくば市)が開発した「HAL(ハル)腰タイプ作業支援用」と呼ばれる製品4台。腰や太ももにベルトなどを巻き付けて装着する。

 体を動かそうとする際に脳から筋肉に伝わる微弱な信号をセンサーで捉えてモーターなどが作動、装着した人の動作をサポートする仕組み。腰への負担が最大4割減るという。

 重さは約3キロ。事前に腰に腹巻きのようなベルトを巻く必要があるが、「本体は30秒以内で装着でき、着けたまま救急車両に乗り込める」(海老名市消防本部)のも特徴だ。

 救急隊員は傷病者を乗せた担架を運んだり、ストレッチャーを持ち上げたりする業務で腰痛を発症するリスクが小さくない。市消防本部が救急隊員(全36人)に実施した聞き取りでは、過去に腰痛を経験したことがある人が58%、腰痛に不安を持つ人が53%に上る。

 市消防本部本署に勤める女性の山本理紗隊員(27)は「エレベーターがなく、高層階から人を運ぶ際など、より不安なく安心して活動できる」と効果を実感する。一方、隊員の中からは「屋内が狭く、家具が多い場所などでスーツを脱がないといけなかった」といった報告もあり、市は今後に役立ててもらう目的で開発元に報告するという。

 本署に2台、北分署と南分署にそれぞれ1台を配備した。市は今回の導入をきっかけに、将来的には農業分野や高齢者福祉など救急の現場以外での活用も模索していく考え。

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