ナビ画面て、タテ型と横型ってどっちがいいの?

ディスプレイは見やすいさと扱いやすさが大事!

急速な進化を遂げる車内インフォテイメントシステム。通信することで表示できるコンテンツが増える一方で音声によるコマンドシステムの搭載も当たり前のようになってきた。そのインターフェースの中核を担うのがディスプレイだ。今回はこのディスプレイに纏わるお話をさせていただきたい。

ワイド画面が当たり前だったが、近年タテ型の画面が人気に?

新車に搭載されるディスプレイでよく見かけるのは横に広がる超ワイドなタイプで、メルセデス・ベンツのAクラスなどに搭載されているMBUXがその代表だろう。ダッシュボードの半分以上の幅を持ち、その表示からは先進的なイメージが否応なしに伝わってくる。

その一方でタテ型ディスプレイを採用するクルマも少なからず存在する。代表的なのがトヨタ プリウスPHVで、テスラでもタテ型を採用し、最近はボルボに搭載されるインフォテイメントシステムも全車タテ型となっている。また、カー用品店で手に入る製品として、ディスプレイを回転させることでタテ型としても使えるカーナビゲーションも登場した。

上下分割表示ができる、タテ型画面のほうが使いやすい?

では、ヨコ型とタテ型でどちらが良いか。一概には言えないと思うが、操作する際の使いやすさや、今後の将来性を踏まえるとタテ型の方に軍配が上がりそうな気がする。

その理由として、ヨコ型で複数の機能を表示させようとすれば、縦方向に制限が出てしまい、結果としてスクロールして表示内容を切り換えざるを得ない。

対してタテ型は、今や画面サイズが10型を超える大画面となり、上下二分割しても十分な情報が伝えられる。特にディスプレイを二分割した時の一覧性では、横方向にスクロールが必要になるヨコ型よりもタテ型の方が有利だと思うのだ。

実は20年以上前からタテ型ナビはあった

実はカーナビゲーションのディスプレイをタテ型にする発想はかなり前に登場していた。カーナビゲーション普及の黎明期であった1996年にシャープは「6E-GP3」という製品を発売し、この時に初めてディスプレイを縦に回転して使うアタッチメントを用意して話題となった。当時はまだ縦方向が長い4:3のディスプレイだったが、それでもディスプレイをタテにすれば進行方向のエリアをさらに広く表示できる。その後、ディスプレイ比率を16:9とした「7E-GP5W」へと引き継がれたが、当時、企業スローガンを「目の付けどころがシャープでしょ」としていた同社らしい新発想だったというわけだ。

タテ型が消えたのは当時は画面が小さく横型がベストだったから

しかし、その後ディスプレイの縦横比率がシャープと同じ16:9へと一斉に切り替わるも、この方法に追随するメーカーはなかった。その理由として、当時はディスプレイの主流が5.8型と今よりもずっと小さく、交差点拡大図などの情報はヨコのまま二分割した方が見やすかったからだ。

大画面時代のいま、タテ型が有利に?

ただ、ディプレイサイズが大きくなった今は事情がかなり違う。たとえば上半分でカーナビゲーションを表示し、下半分でオーディオやエアコン情報を表示しても十分なサイズが確保できる。一方でヨコ型は画面サイズが大きくなっても一覧性は低い。結局、エアコン用などとして他にも小型ディスプレイが必要になってしまうこともあるだろう。

加えて、最近は一つのディスプレイを自在に区分けして表示させるマルチビューとしての使い方も提案されるようになった。そんな時にもタテ型の方が柔軟性が高く、多彩な表示に対応できる。自動運転に向けた動きが確実に進む中で、こうした対応は欠かせなくなってくるはずで、その意味でもタテ型表示の優位性は揺るがない気がするのだ。

タテ画面は老眼にはキツイ?

と言いながら、タテ型ディスプレイを備えたプリウスPHVに乗ってカーナビゲーションを使うと意外な盲点に気付いた。ナビゲーションを全画面で使う時、遠近両用メガネをかけていると、自車位置付近の様子がボヤけてよく見えない。要は、自車位置が表示される部分が遠近両用メガネの下の部分と重なって焦点が合わないのだ。下半分を他の情報を表示させてナビゲーションを上側にすればその問題は解消するが、老眼が始まっている世代には使う時に注意すべき点と気付いた。

その点、ボルボのディスプレイではそんな状況が発生しない。その辺りまでを考慮して設計されたかどうかは定かではないが、今後はインテリアを設計する際にそうした配慮も重要なポイントになるのではないかと思う。

【筆者:会田 肇】

© 株式会社MOTA