【U-12W杯】オープニングR全勝突破の侍ジャパン、強さの理由は…初の世界一へ“追い風”も

侍ジャパンU-12代表・仁志敏久監督【写真:Getty Images】

オープニングラウンド最終戦は初回10点猛攻&継投ノーヒッターで4回15点差コールド勝利

 台湾・台南市で行われている「第5回 WBSC U-12ワールドカップ」で、侍ジャパンU-12代表は30日のオープニングラウンド第5戦で南アフリカに15-0で4回コールド勝ち。オープニングラウンド5戦全勝で首位突破を決めた。初の世界一へ向けて、強さを見せつける5試合となった。

 南アフリカ戦では、初回にノーヒットで先制に成功すると、打線が爆発した。先頭の赤澤琉偉(八尾中央ボーイズ)が四球で出塁すると、盗塁に成功。暴投で三塁に進み、今井蓮(大阪八尾ボーイズ)の三塁内野安打を相手がエラーした間に生還。続く林京乃佑(東京城南ボーイズ)の二塁打で2点目を奪うと、相手の守備が乱れる中、高畑知季(兵庫波賀リトルリーグ)、片岡大瑠(大阪狭山ボーイズ)の適時二塁打、今井の適時左前打で8点目。林が今度はレフトへ豪快な2ランを放ち、初回だけで一挙10得点を奪った。

 2回はあっさりと2アウトを奪われたが、桑元が中前打で出て二盗。高畑の適時二塁打、片岡の適時中前打で2点を追加した。3回は1死満塁から桑元の走者一掃となる三塁打で3点を奪い、4回コールド勝利の条件となる15点差に到達。仁志監督は「点はもうちょっと入ってもよかったと思います」と振り返ったが、この試合も日本の攻撃力は光った。

 投手陣は、4投手の継投でノーヒットノーラン。先発の重松寿翔(豊川中央ボーイズ)が初回を3者凡退に抑えると、2回は青木が3四球で1死満塁とするも一邪飛、見逃し三振で無失点。3回は今井が3者凡退に抑え、4回は桑元が3四球で1死満塁とピンチを招いたが、2者連続三振で切り抜けた。6四球で2度の1死満塁のピンチも無失点で切り抜け、15点差を守り切った。

全試合で初回に先制、1度もリードを許さない圧倒的な強さのキーマンとは?

 怒涛の5連勝だった。26日のチェコ戦は21得点の快勝発進。先頭の赤澤が二塁打で緊張を破ると、初回から7得点。投手も4人の継投で開幕戦を1安打完封勝利で飾った。27日は野球大国キューバに6-0で勝利。相手のミスを見逃さず6安打で6得点を奪い、投手陣は連夜の完封で締めた。

 最大のヤマ場は28日。3大会連続準優勝の地元チャイニーズ・タイペイ戦だ。地元ファンの大声援で圧倒的アウェーの空気感を小さな侍たちが一掃した。初回先頭の赤澤が四球で出ると、1死三塁から林がセンター前に弾き返して先制。さらに高橋昇聖(北上ゴブリンズ)の2ランでいきなり3点を奪う。3回には高橋の2打席連発で5点リードとし、それを投手陣が守りきり7-4で勝利。仁志敏久監督も「すごく気合いが入っていた」と唸る会心の勝利だった。さらに29日はスタメン8人を入れ替えながらフィジーに30-0で大勝。そして、南アフリカ戦も快勝で締めくくった。

 侍ジャパンは5試合全てで初回に先制。その後、1度もリードを許さない“横綱相撲”で勝ち上がった。チーム全員が好成績を残しての結果だが、仁志監督がオープニングラウンドを通して称賛し続けている選手がいる。1番の赤澤だ。1番として出場した4試合全てで初回に先頭で出塁し、自慢の快足を生かして必ずホームに帰ってきている。指揮官は「勇気を与えてくれる」と、切り込み隊長がチームにもたらす勢いに手応えを感じている。

 さらに、仁志監督はオープニングラウンドを振り返って「キューバに上手く勝って、チャイニーズ・タイペイにも良いゲームをした。子供たちにはそこがヤマになるって話はしていた」と、ともにオープニングラウンドを突破した2チームに勝ったことが大きいとした。これには理由がある。スーパーラウンドではグループBを突破してきた韓国、メキシコ、ベネズエラとのみ対戦し、チャイニーズ・タイペイ、キューバとの対戦成績はそのまま引き継がれる。そのため、同グループの2チームに勝利している日本と韓国がスーパーラウンド開始時点で優位な立場にいるのだ。さらにグループBでは3大会連続優勝中の米国がまさかの敗退。初の世界一へ向けて、日本に追い風が吹いている。

 そのスーパーラウンドでは、1日にベネズエラ、2日に韓国、3日にメキシコと対戦する侍ジャパン。強豪国との3連戦となるが、チームの雰囲気は良い。悲願の世界一へ、まずはスーパーラウンド上位2か国だけが進出できる決勝の舞台を目指す。(工藤慶大 / Keita Kudo)

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