長崎市は31日、世界文化遺産「明治日本の産業革命遺産」を構成する「端島炭坑」(軍艦島)で、アスベスト(石綿)とみられる繊維物質を検出したと発表した。同日、観光客の上陸を禁止した。
2009年の上陸解禁後、天候以外の理由で上陸を禁止したのは初めて。今後の検査で石綿と確定すれば、上陸再開のめどが立たなくなり、観光への多大な影響が懸念される。
市観光政策課によると、島内の見学広場3カ所で石綿とみられる繊維物質を検出。このうち2カ所で基準値の1.2倍から1.6倍を計測した。
市は09年からほぼ毎年、軍艦島で石綿検査を実施。本年度は12日に民間業者に委託して実施し、30日に業者が「アスベストと思われる繊維物質を検出した」と報告した。島内の建物の劣化が原因として考えられるという。
市は8月上旬に再検査を実施。石綿と確定すれば、今後の観光の在り方や除染方法などを国と協議する方針だ。
軍艦島上陸観光クルーズを運航する船会社は、料金の払い戻しや、健康被害を心配する問い合わせへの対応に追われた。
運航会社の一つ、軍艦島コンシェルジュの担当者は「アスベストというイメージは痛い。大気汚染は初めてのことで戸惑っている」と話した。やまさ海運の担当者は「夏休みの時期で社としては非常に厳しい。早期復旧と安全確保に取り組んでほしい」と注文した。
市によると、軍艦島の17年度の上陸者数は約29万2千人。