楽しみながら空き家再生 長崎大の学生ら 長崎・坂本地区 休憩スペースなどに活用へ

空き家になっていた長屋の改修に取り組む鶴地さん(中央手前)ら=長崎市坂本2丁目

 「この長屋を活用したら、地域にどんな影響があるだろう」-。長崎市坂本地区で、長崎大の学生らが、空き家になっていた2軒長屋の再生に取り組んでいる。市内で問題となっている斜面地の空き家だが、気負わず楽しみながら可能性を模索している。
 山王神社のほど近く、ほとんど人が通らず静かな日中の坂道。長崎らしい景色だが、そこに立つ古びた長屋をのぞくと乗りの良い洋楽が流れ、学生らが和やかに屋内の改修作業を進めていた。
 学生らは、同大の安武敦子教授の研究室で建築などを学ぶ工学部生、同大大学院工学研究科の院生の計14人。修士2年の鶴地宏海さん(24)=佐世保市出身=を中心に、昨秋から取り組んでいる。
 3年ほど前、同大や市、民間団体などで斜面地の再生に取り組む「ながさきHOPs(ヒルサイドオープンプロジェクト)」が発足。現在改修している長屋に隣接する空き家を借り、同大経済学部の学生が1年間、シェアハウスとして暮らすなど試行錯誤してきた。
 長屋の改修もその一環。大学4年の研究で全国的な空き家再生の事例を調べた鶴地さんに、安武教授が実際に自分で再生することを提案した。「空き家を変えるって面白そう」。鶴地さんは昨年10月から周辺を調査して活用策を検討し、同12月から研究室の仲間と共に作業を進めている。
 長屋は44平方メートルの木造平屋建て。6畳一間と6畳・4畳半のスペースがある。当初は「古すぎて活用は無理」と思ったという。畳敷きの床や天井、2部屋を仕切っていた壁を取り除き、床のフローリング貼りや壁の塗装が完了。今後は土間や台所を整備して、8月中の完成を目指している。
 活用に関し、3月には周辺住民へのヒアリングも実施。高齢者から、雨天や夏の暑い日に休憩する場所を求める声があった。鶴地さんは「めちゃめちゃしんどそうに坂を上っている。普段は休憩スペースとして、たまに僕らがスポーツ観戦や家具を作るワークショップなどのイベントを開いて使えたら」と構想を語る。
 本年度中にイベントを開いて、アンケートなどを実施し、修士論文にまとめる予定。来春には就職するため、長屋のその後の活用や周辺地域の活性化は後輩に託すという。鶴地さんは「ここまで本当にいろいろな人に助けられた。後輩に活動をつないでもらって、坂本といえばここがあるという場所になると良い」と希望を抱く。

屋内を改修中の長屋

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