冬は県外で“助っ人” 県内バス業界で運転手派遣の動き

運転手を県外派遣しているとなみ観光交通=砺波市一番町

 県内バス業界で、運転手を冬季の閑散期に温暖な地域のバス会社に派遣し、柔軟な働き方や経営効率化、資質向上につなげる動きが出ている。となみ観光交通(砺波市一番町、余西孝之社長)が2017、18年度に中京圏に2~3人ずつ派遣し「成果があった」として本年度も継続する。県バス協会(富山市新庄町)によると県内初とみられ、他社も検討を始めている。 (編集委員・北崎裕一)

 本年度から有給休暇の年5日取得が義務化されるなど一層の働き方改革が求められる中、バス業界は運転手不足が慢性的で、休日取得や長時間労働緩和が課題とされる。大型2種免許が必要で、乗客数十人を運ぶだけに高い安全性が求められ、外国人では補いにくい事情もある。

 となみ観光交通は、秋の行楽シーズンを終え、貸し切りバス需要がほぼ半減する12~3月に40代の中堅ドライバーを静鉄グループ(静岡)などに派遣。静岡と大阪のテーマパーク「ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)」を結ぶコースなどを走っている。

 人件費は派遣先負担で、県内に残る運転手も閑散期に仕事が増えて収入増になり、全体で経営効率化できるという。派遣先では車両点検や接遇を習得する研修にもなり、帰県後に報告会をしている。

 余西社長は「人手不足の中、タイムリーに人材を融通しないと成り立たなくなる。この手法は他の業界にも広がる可能性がある」と話す。

 海王交通(射水市本町・新湊、福田剛平社長)は本年度、路線バスの運転手派遣を検討中だ。釣谷隆行常務は、大手の会社で運行管理などを学べることを最大の利点に挙げ「県内を離れる本人と家族の理解があれば実施したい」と話す。

 県西部の別の会社も派遣に関心を持っている。

 静鉄グループは「他の運転手が休みやすくなるなど助かっている」として、受け入れ拡大を目指す。

 県バス協会は「運転手派遣は全国で広がっていくだろう。業界は女性も働きやすいシフトにしたり、短期間で辞める人を減らして定着率を高めることも重要だ」としている。

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