【美女の乗るクルマ】-scene:15- トヨタ スープラ × 佐野真彩

トヨタ スープラ × 佐野真彩

最も思い入れのあった車で突如現れたのは、最も愛した彼女だった

40歳を超えるにあたって、クルマは卒業したはずだった。

しかし今、自分の目の前にあるこのクルマの官能的なボディラインを見ていると、あの頃の興奮が蘇ってくる。ただ同時に、このクルマのオーナーに対しても特別な感情を抱かざるを得ない。突然現れた彼女は、俺に何を求めていたのか。

劇薬のような女性とクルマが去っていった今、俺はただただ困惑するばかりだ───。

(この物語はフィクションです。)

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トヨタ スープラ × 佐野真彩

雰囲気をまとった一台のクルマが目の前にある。シルバーグレーに彩られた車体表面の細かい粒子が、光を反射して鈍く輝いている。これが新しいスープラだ。

17年ぶりの新型が発売されるにあたり、どうしても我慢できずに情報を読み漁った。その成り立ちや最新鋭の技術、快適装備に至るまで、俺が昔に乗っていた80系スープラとは違う、とても現代的なクルマだった。ただそれでも、古典的スポーツカーらしいワイド感のあるロングノーズ&ショートデッキのスタイルは健在で、スタイリングは先代型のそれを彷彿とさせる。

そんな新型スープラとの出会いは、突然だった。仕事帰り、ちょっと買い物がてら路面店を覗いてまわった。ここらは夜景が美しく、雰囲気を楽しむだけでもいい場所である。目当ての物は見つからなかったものの、風景を楽しみながら歩道を歩いていた俺の目の端に、路肩へ停車した新型スープラの姿が映ったのだ。

新型スープラから颯爽と降りてきたのはひとりの女性だった。その時、一瞬だけ車内が垣間見えたが、後席のない2シーターという部分も、俺が載っていた80とは違う点だ。およそスポーツカーの運転に似つかわしくないヒールの音を鳴らしながら、その女性がこちらへ近づいてくる。口元は笑っているが目は笑ってないようにも見える。

トヨタ スープラ × 佐野真彩

女性:「ひさしぶりね」

俺 :「ああ、あれから10何年経つかな」

女性:「覚えてないの? 私ははっきり覚えてる」

俺 :「忘れるわけないだろう」

43年生きてきて、最も愛したのは彼女だった。そして、最も思い入れのあったクルマはスープラだった。

その両者と一遍に邂逅するとは、いったいなんという夜だろう。

トヨタ スープラ × 佐野真彩

あの頃、彼女に自分の時間と心血をそそいでいたとは言いきれない

トヨタ スープラ × 佐野真彩

彼女の名前は、佐野真彩。

気がつくと、彼女に言われるがまま、スープラの助手席に座らせてもらっている。

スープラにばかり目がいっていたものの、彼女はあいかわらず、いや記憶していた彼女より綺麗になっていた。自然なやわらかさと艶っぽさをたたえた小さな顔に、衰えることのないスタイル。ただ、彼女の目に感情はなかった。

実際にスープラに乗りこんでみると、やはり年月にふさわしい進化が感じられた。

減衰力を最適な状態に制御するという『アダプティブバリアブルサスペンションシステム』の効果なのか、走りはしなやかで俊敏だ。そして乗り心地も熟している。前後重量配分50:50というのも絶妙に効いているのだろう。

トヨタ スープラ × 佐野真彩

10年前のあの頃、僕は80スープラに乗り、真彩と付き合っていた。

当時、すでにスープラは発売から15年以上が経過していたが、俺が乗っていたのはフルノーマルで保存状態もよく、コンディションも万全。自分にとってまさに「宝物」だった。業者からは「奇跡的」「完璧」とまで言われていた。

なによりスープラは、自分の運転操作に素直に答えてくれる、かけがえのない存在だった。しかし、恋人というものは、偶然の出会いが重なり、たまたま一時期一緒にすごしただけの間柄だと、当時は考えていた。

正直、真彩と付き合い始めた理由も、別れた理由も今では思い出せない。ただ、俺が薦めたS14シルビアに乗っていたことだけは印象に残っていた。

あの頃、彼女に自分の時間と心血をそそいでいたとは言いきれない。スープラのことはあんなにも見続けていたのに。結果的に、彼女は俺の前から姿を消した。その頃、彼女への感情が否定的なものだったのか、はたまた肯定的だったのかについても、正直わからないのだ。

トヨタ スープラ × 佐野真彩

真彩:「あたし、S14に乗ってたじゃない」

俺 :「後期のツリ目のやつな。前期よりカッコよかったな」

真彩:「スープラ以外のクルマは全部一緒だと思ってたくせに」

俺 :「そんなことないさ」

真彩:「いや、そんなことあるよ。だってあなた、スープラと結婚したい、って言ってたもん」

俺 :「言ってたかもね。それを聞いて真彩がすごく驚いた顔をしてたことは覚えてるよ」

トヨタ スープラ × 佐野真彩

何不自由のない、健康で幸福な生活を送っていると思っていた。しかし違った。

トヨタ スープラ × 佐野真彩

話を聞くと、現在、真彩は外資系企業に勤めているのだという。ヨーロッパに出張へ行くことも多く、あちらでは自分でハンドルを握る機会も多いそうだ。むこうのクルマはスポーティなものばかりだから、日本では少なくなったスポーツカーを、それも最新モデルの新型スープラを愛車に選んだのかもしれない。

しかし、彼女は本当に、俺の「宝物」を乗りこなせているのだろうか。ハンドルを握っていてもにこりともしないではないか。

俺 :「なあ、俺にもすこし運転させてくれないか」

真彩:「そうね、わたしとまた付き合ってくれるならいいよ」

俺 :「え?」

真彩:「バカね、冗談に決まってるでしょ」

俺 :「なんだよ、びっくりさせるなよ。俺もう結婚して子どももいるんだぜ」

トヨタ スープラ × 佐野真彩

ハンドルを握った。FRに直列エンジン搭載というのは、このクルマのキャラクターを決定づけるコアな部分だ。アクセルを踏み込むだけで、魂を揺さぶられる。もちろん、BMWが作った物だとわかっていても。その走りのセッティングは間違いなくトヨタのクルマなのだと実感させられる。ロングノーズだが重さもまったく感じられない。

夜の重苦しい空気を攪拌するかのように、新型スープラで疾走した。正直、鳥肌がたった。昔からこのクルマにはドライバーの心を奪う、決定的な何かがあった。そして間違いなく、この新型にもそれが感じられた。

トヨタ スープラ × 佐野真彩

今の俺は、何不自由のない、健康で幸福な生活を送っていると思っていた。しかし違った。またこのクルマのステアリングを握りたい。精密なのに奔放な、俺の「宝物」に。

結局、彼女は僕を道端に下ろすと、決定的な何かを話すことなく、新型スープラとともに去っていった。俺が結婚していると言った時の、彼女の感情の感じられる表情とともに、車体後方にある幅の狭いダックテールスポイラーが、妙に印象に残った。それは、俺がかつて乗っていた80の巨大なリアウイングとは決定的に違っている点だった。

[Text:安藤 修也/Photo:小林 岳夫/Model:佐野 真彩]

佐野 真彩(Maya Sano)

トヨタ スープラ × 佐野真彩

1985年2月13日生まれ(34歳) 血液型:A型

出身地:香川県

2011年 Weds Sports Racing Gals

2012年 HANKOOKレディ

2013年 Weds Sport Racing Gals

2014年 Weds Sport Racing Gals

2019年 Weds Sport Racing Gals Ambassador

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