イケアが肉不使用の「植物由来」フードを強化する理由

スウェーデン発祥の家具ブランド「IKEA」を展開するイケア・ジャパンが、イケアレストランやビストロで提供するフードメニューで、植物由来の商品の強化を進めています。

家具の販売のイメージが強いイケアが、なぜ植物由来のフードに力を入れ、消費者からも受け入れられているのでしょうか。同社のフードの担当者から話を聞きました。


75万個売れた、肉を使わない「ベジドッグ」

イケア・ジャパンは5月から、原材料に肉や卵をいっさい使わず、植物由来の材料だけで調理した「プラントベースフード」を投入しています。

「ベジドッグ」(100円、税込み、以下同)は、ひよこ豆やグリーンピースなどから作られているという商品。「プラントベースソフトアイス」(80円)はバナナの果汁のみから作られた植物由来のアイスで、動物由来の原料は不使用です。

同社の佐川季由フードマネージャーによると、バナナ味のプラントベースソフトはアイスクリーム全体の売り上げの20%を占めます。また、ベジドッグの販売数は75万個を突破したそうです。

こうした中で、新たに9月上旬の発売が発表されたのが「キッズベジバーガー」(399円)。植物由来のパテを使用しており、フライドポテトと同じような形状にした野菜スティックが入っています。

食品が海外より売れる日本のイケア

このような植物由来のフードメニューを投入する背景にあるのは、イケアのサステナビリティ戦略です。環境への負担を抑える取り組みとして2025年に向けて、イケアレストラン・ビストロで使用する原材料の約半分を動物性から植物由来の原材料へシフトすることを目指している、といいます。

佐川フードマネージャーによると、家具を扱うイケアが店内で食品を販売する理由は、同社の創業者であるイングヴァル・カンプラード氏が残した「空腹の人とビジネスをするのは難しい」という言葉に現れているとのこと。イケアの店内で長時間を過ごす来店客が空腹になるだろうと、食事を提供したのが始まりです。

現在はスウェーデンの文化を伝えていくとともに、家具と同様にイケアのビジネスの柱になっていくという位置づけ。フードの部署だけで利益の出るビジネスモデルに変更し、日本全体の売り上げの12%ほどを占めています。これはイケアのグローバルの平均の2倍ほどの数値だといいいます。

それほど数値が高い理由について、佐川フードマネージャーは「商品を低価格で提供しつつ、常に季節を取り入れたメニューや、ヘルシー感のあるメニューを提供していることが消費者にウケている」と分析します。

今後はフレキシタリアンが増える?

一番の売れ筋はミートボールですが、植物由来の「ベジボール」も3年前から販売しています。肉を使用した商品が完全になくすわけではないですが、二酸化炭素の削減など環境に配慮した選択肢を提案していきます。

海外のように普段はベジタリアンだが、時と場合に応じて動物性食品を摂取する「フレキシタリアン」が増えると、佐川フードマネージャーは予測します。

「お酒を抜くように、今日は肉を抜くということもありうる。そうした時に、植物由来の商品をチョイスしていただけたらうれしい。これからもビジネスと環境の両方に良い商品を開発していきたい」

世界的な流行となりつつある、肉に代わる植物由来の食品。国内でも利用者は増えていくのでしょうか。各社が商品開発にしのぎを削っているので、消費者の選択肢はますます増えていきそうです。

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