飢えた女性を「ニオイ拷問」で…北朝鮮収容所の撤廃要求を米で討議

米政府系のボイス・オブ・アメリカ(VOA)は3日、米上院で、北朝鮮に政治犯収容所を全面撤廃するよう促す決議案が発議されたと伝えた。

非核化対話を優先し、北朝鮮の人権問題を後回しにするトランプ大統領の姿勢により、米国における対北人権攻勢は見えにくくなっている。しかし議会においては、こうした取り組みが根強く続けられている。

中でも最大のターゲットになっているのが、「この世の地獄」とも言われる政治犯収容所だ。


北朝鮮で「管理所」と呼ばれる政治犯収容所には、8~12万人が収容されていると見られている。

そして、管理所をはじめとする北朝鮮の拘禁施設では、あらゆる形態の虐待が日常化している。たとえば、飢えた女性収容者に食べ物のにおいを嗅がせ、死に至らしめる「ニオイ拷問」とも言える行為が横行しているのだ。

VOAによれば、決議案を発議したのは共和党のジョシュ・ホーリー上院議員で、これには上院外交委委員会東アジア太平洋小委員会のコリー・ガードナー委員長とエドワード・マーキー民主党幹事、共和党の重鎮であるマルコ・ルビオ議員など7人が名を連ねた。

下院でも2月、これと同様の決議案が発議されており、上下両院で北朝鮮の人権問題が扱われる形になったわけだ。ちなみに下院の決議案は、議会で審議されている朝鮮半島関連の案件の中で最多の57人の議員が支持している。

決議案は上下両院とも、北朝鮮指導部に収容所の全面撤廃を促すと同時に、北朝鮮当局による「人道に対する罪」を担当する特別裁判所の設立を国際社会に求めている。

また米国政府に対しては、北朝鮮の収容所運営に責任を負う個人を引き続き制裁リストに加え、収容所の存在とそこで行われている犯罪について、国際社会に知らせるよう要求している。

こうした要求が、トランプ政権下で実現する可能性はまずない。しかし、議会からのこうした圧力にさらされていれば、トランプ氏といえども、北朝鮮の人権状況の「悪化」を見て見ぬふりすることは難しいだろう。

米議会におけるこうした取り組みは少なくとも、北朝鮮当局のやりたい放題を大なり小なり抑止する効果があると思われる。一方、日本はどうか。

日本政府は、安倍晋三首相が金正恩党委員長との会談を目指していることもあり、北朝鮮を人権問題で非難することには消極的だろう。

しかし議会は、与党も含め、必ずしも政府と歩調を合わせる必要があるわけではない。米議会と同様の決議案を討議し、北朝鮮に対する「圧力カード」を作っておくことも必要ではないだろうか。

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