正念場の商都<上>公益施設の導入構想

25日に高岡大和が閉店する御旅屋セリオ=高岡市御旅屋町

■相乗効果 狙えるか

 高岡市内唯一の百貨店、高岡大和が25日に閉店する。市は再開発ビル・御旅屋セリオ(同市御旅屋町)を中心市街地の核と捉え、閉店後の空きフロアに公益施設の導入を模索。民間の活力も生かそうと、官民による検討会議も設置した。ただ、まちなか再生に向けた道筋は今も見通せず、商都・高岡は正念場を迎えている。

 「“セリオタウン”というイメージ。まちのようにいろんな機能が入る」。2日の記者会見で、高橋正樹市長は御旅屋セリオのコンセプトをこう説明した。

 高岡大和閉店後のセリオは商業スペースを1、2階に集約し、大和が開設するサテライトショップや大和以外の既存店などが入る。

 市は「物販だけでのにぎわい創出は困難」として3~5階を公益施設を中心にしつつ、オフィスなど民間の入居も呼び込む青写真を描く。これまでの商業中心から暮らしの支援や文化活動、観光によって、人が行き交うビルに生まれ変わらせる構想だ。

 市長は既に6~8階に入る市子育て支援センターや市観光協会など既存施設との相乗効果を公益施設を選ぶ判断基準に挙げ「あらゆる可能性を探り、できるだけ早く姿をまとめたい」と会見を締めくくった。

 市議会6月定例会で市長が公益機能の導入を表明後、市はどういったテナントを入れるのか、公共施設再編計画も踏まえて庁内での選定作業を加速させた。

 これまで候補として唯一浮上したのが高岡地域地場産業センター(同市開発本町)だ。銅器や漆器といった伝統工芸品を取り扱うため誘客が見込めることなどが理由で、市などが出資する公益財団法人が運営している。

 ある役員は「業界団体などが納得するのか。移転費用や家賃も問題になる」と漏らす。財政再建中の市にとっては、どの施設をセリオに移すとしても、資金や当事者の理解が障壁となり、難しい判断を迫られる。

 市はこの間、進ちょく状況を尋ねる市議会や報道陣に対し「入居した場合の効果を見極め、幅広く検討している」と同じ回答を繰り返し、具体的な機能や施設名には言及していない。

 「どんな公益施設が入るのか分からなければ、民間テナントは出店の可否を判断しにくい」。テナント誘致に奔走するセリオの運営会社、オタヤ開発の藤田衞治社長は訴える。地下1階は食料品店、7階は飲食店と、現在と同じ機能を維持したい考えだが、事業者との交渉は難航しているという。

 市からの情報が少ないという指摘に対し、川尻光浩産業振興部長は「市民の不安は認識している」と認めつつ「協議の過程が外部に出れば、テナント誘致に影響が出る」と説明。候補が絞られた段階で公表する考えだという。

 まちなかの心臓部であるセリオの再生は熟考が必要な一方、時間をかけ過ぎれば、市民の足と心は中心市街地から遠のく。市には一日でも早い決断が求められる。

© 株式会社北日本新聞社