【U-12W杯】準優勝に終わった侍J 涙に暮れた18人に仁志監督がかけた言葉「みんなが息子」

決勝で惜しくも敗れた侍ジャパンU-12代表【写真:Getty Images】

「周りにちやほやされても、何を言われても、絶対に目標から目を離さない」

 台湾・台南市で4日まで開催されていた「第5回 WBSC U-12ワールドカップ」。侍ジャパンU-12代表は初めて進んだ決勝で地元チャイニーズ・タイペイに0-4で敗れて悲願の初優勝を逃し、若き侍ジャパンたちは涙に暮れた。

 オープニングラウンドから怒涛の7連勝で決勝に進んだ侍ジャパンU-12代表だったが、最後にあまりにも悔しい結末が待待ち受けていた。3回に2死満塁から連打で2点を先制されると、4回に犠飛、6回にソロで追加点を献上。打線は好投手チェンの鋭いカーブに苦戦し、最後まで得点は奪えなかった。

 初の世界一に手の届くところまで来ていただけに表彰式になっても、選手たちの目からは涙が止まらなかった。大会中、試合後のミーティングに時間を多く割き、時には厳しい言葉もかけ、そして選手1人1人と向き合ってきた仁志敏久監督は肩を落とす選手たちに、最後のミーティングで「2位になったということは下を向いて帰る結果じゃない」と切り出し、こう語りかけた。

「この負けでやっぱりああしておけばよかったとか、あのときこうすればよかったとか、初めて思ったこともあると思う。そうならないためにも、これからはずっと勝ち続けてほしい。負けて確かに気付くこともあると思う。でも、負けていいことなんて何もない。やっぱり勝ちたいよな。だから、この負けを機に、ずっと勝つような人間になってほしい。この大会中、色んなミスもあった。でもミスを活かせば、みんなの経験になる。ミスをそのままにしておけば、出来ないままになってしまう。出来なかったことは出来るように努力してほしい。それが成長だと思う。この負けで何を感じたか、この大会で何を感じたか、そういうものを帰ったら考えてほしい」

 決してこれが野球人生のゴールではない。まだ12歳の少年たちだ。今後は中学校、高校と野球人生は続いていく。この台南での経験が今後の糧となることを願ってやまない仁志監督は、これからも目標を見失わないことの大切さを説いた。

仁志監督の願い「またどこかで会うと思う。会える場所に来てほしい」

「批判もあれば称賛もある。批判を全部受け止めちゃたら、みんな心が病気になる。称賛を全部受け止めちゃったら、みんなバカになる。だから、どちらも半分だけ聞いておきなさい。そして自分の行く道を、いつも目標を見失わないように。周りにちやほやされても、何を言われても、絶対に目標から目を離さない。そうやって成長していってほしい。プロ野球選手になることも、もちろん素晴らしいけど、立派な社会人になることも俺としては望みの一つだね」

 3大会連続でこの世代を率いてきた指揮官は、これまで指導してきた選手たちのその後を常に気にかけているという。そして、また新たに“教え子”となった18人の若きサムライたちにも、大きく羽ばたいていくことを願った。

「またどこかで会うと思う。会える場所に来てほしい。俺はいつもプロ野球の近くに必ずいる。もちろんレベルの高い、ジャパンのユニフォームを着た選手たちも近くにいる。U-12の監督をやっていて、いつもそれが楽しみで仕方がない。もう甲子園に出てるやつもいますし、凄い学校に行って頑張っているやつもいる。そういう先輩たちと肩を並べて、また胸を張って会いに来てほしい。もちろん野球をやっていなくてもいい。今こういうことをやっています、こういう目標持って生きていますとかでもいい。またみんな元気な姿で会いましょう。本当にこのメダルをありがとう。このチームはみんなが息子だと思っている。これからの人生を頑張って。本当にありがとう」

 最後は選手たちへの感謝の言葉で締めた仁志監督。2週間の間、ともに過ごした選手たちを父親のような眼差しで見つめていた。初の世界一の夢は後輩たちに受け継がれ、18人の選手たちは新たなステージに進んでいく。(工藤慶大 / Keita Kudo)

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