報告、発生2時間後にずれ込む 要因検証、公表へ 愛川・受刑予定者逃走

横浜地検を出る男=6月23日午後5時15分ごろ、横浜市中区

 愛川町で6月、男が刑務所への収容を拒んで逃走した事件で、収容業務を担当した横浜地検小田原支部から地検本庁幹部への報告が発生から約2時間後にずれ込んでいたことが5日、捜査関係者への取材で分かった。近隣自治体への一報についても、緊急連絡先を事前に把握していなかったため手間取ったことも判明。地検は、逃走に至った経緯や背景、情報伝達が遅れた要因などをまとめた検証結果を公表する。

 事件は6月19日午後1時すぎに発生した。保釈後に窃盗などの罪で実刑判決が確定した愛川町田代、無職の男(43)宅を、地検職員5人と厚木署員2人が訪問。激高した同被告は刃物を振り回しながら威嚇し、車で逃走した。

 捜査関係者によると、現場から報告を受けた同支部は厚木署と対応を協議するよう指示。その一方、県警が事件の公表を判断すると思い込み、発生から約2時間後に県警から公表の判断を迫られるまで中原亮一検事正ら本庁幹部への報告も行わなかった。

 本庁幹部から近隣自治体への連絡を指示された後も、窓口の把握に時間を要し、厚木市や愛川町への伝達はさらに数十分から1時間後にずれ込んだ。

 また、同被告宅を訪れた地検職員と厚木署員の計7人が、事前に手順や人員配置などを巡って綿密な打ち合わせをしないまま、収容業務に臨んでいたことも分かった。

 同被告は2月に懲役3年8月の実刑判決が確定した後も、同支部から再三にわたって出頭を要請されたが、「歯が痛い」「腰の病気で病院に行くため出頭できない」などと理由をつけて拒否。2月下旬に検察事務官ら3人が接触した際も激怒し、同支部が収容を断念していた。

 地検は、こうした経緯がありながら、具体的な対処方針を決めずに安易に同被告と接触した点を問題視し、事件の検証報告書に再発防止策を盛り込むとみられる。

 同被告は逃走開始から4日後の6月23日朝、横須賀市のアパートに潜伏しているところを発見され、身柄を確保された。これまでに公務執行妨害のほか、アパートに住む男に自身をかくまうよう依頼したとして犯人蔵匿教唆や、覚せい剤取締法違反(使用)の罪でも起訴されている。

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