正念場の商都<下>リノベーション

シャッターで閉ざされた建物が並ぶ御旅屋通り商店街=高岡市御旅屋町

■再生へ空き物件活用

 七夕飾りで彩られても、物寂しい雰囲気が漂っていた。2日、高岡市の御旅屋通り商店街。恒例の「高岡七夕まつり」が前日に開幕したものの、人通りはまばらだった。

 かつては高岡一の繁華街だったが、シャッターが目立つようになって久しい。今年も高岡大和の閉店発表に前後して婦人服店とスポーツ用品店が店を畳んだ。「これまでのように活動することは難しいだろう」。御旅屋通商店街振興組合の高場章理事長は嘆く。

 イベント開催や通りの管理のため、約30の加盟店から集めている組合費は年間500万円。その多くを大和が負担してきた。今後、収入が減ることは確実で、今回の七夕まつりでは出費を抑えるためアーケード入り口の飾りつけを断念した。

 営業店舗数はピークの約70から半減したにもかかわらず、市の統計では空き店舗は2カ所しかないことになっている。所有者に再び店舗として使う意思がなく、住居や空き家になっている建物が多いからだ。商業地としての機能が失われていることを意味し、まちなかを再生する上で大きな課題になっている。

 市は2017年から、中心市街地で増え続ける遊休不動産のリノベーション(大規模な改修)に力を入れている。人口減少が進む中、既存の建物を活用して新たな価値を生み出し、これからの時代に必要な機能をまちなかに集約させる狙いがある。

 「新しく建ったマンションの住民が集う場が欲しい」「バル(洋風居酒屋)にしたら面白そう」。御旅屋通りから程近い空きビルに、3人の男性の姿があった。市が10月に開くリノベーションスクールのスタッフだ。

 今年で3年目を迎えるスクールは、実際の建物を教材として活用のポイントを学ぶ。全国で都市の活性化に取り組んできたまちづくりのプロが講師となり、受講生は企業経営者や建築士から学生、主婦まで、意欲さえあれば業種は問わない。再生プランを練り上げて所有者に提案し、事業化を目指す。

 過去2年の取り組みの結果、山町筋の空きビルは創業の拠点に生まれ変わり、老朽化が著しい高岡大仏そばの「大仏飲食店街」は改装が決まった。少しずつだが、成果は出始めている。

 所有者が県外にいたり、相続でトラブルになっていたりするケースもあり、空き物件の活用は一筋縄にはいかない。スクールの事務局を務める末広開発の瀧根智志統括マネジャーは「成功例を増やし、機運を盛り上げていくしかない」と話す。

 大和の閉店発表を受けて設置された官民の検討会議でも、リノベーションがキーワードになっている。会議のメンバーで、スクールの責任者でもあるリノベリング(東京)の青木純取締役は「『欲しいまちは自分たちでつくる』という志を持った人のネットワークを築くことが大切」と強調する。人の輪ができれば、資金調達といった現実的な問題も解決しやすいという。

 中心市街地再生の成否は、まちの未来を真剣に考え、行動する「当事者」をどれだけ増やせるかに懸かっている。(西部本社・七瀬智幸、浜田泰輔)

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