2019年地価公示 住宅地27年ぶり上昇 ―ユーザー版2019年春季号から

地価の上昇基調 大都市圏から全国に波及

 国土交通省が公表した2019年地価公示(19年1月1日時点)によると、全国平均の全用途平均は、1・2%の上昇で4年連続の上昇となった。地方圏の住宅地価が27年ぶりに上昇に転じるなど、これまでの三大都市圏を中心とした地価の上昇が地方圏にも波及したのが特徴だ。

 三大都市圏や成長率の高い地方四市(札幌・仙台・広島・福岡市)でも上昇基調がさらに強まった。ただ、住宅地の上昇について、「公共交通機関の駅や商業施設が近くにあるなど利便性の高い地点」が中心となって需要を牽引していると、「地価の個別化」を指摘。同じ圏域・都道府県でも、地点によって上昇率には明確な差が出たとみている。

 公示地価は、住宅地で前年の0・3%から0・6%に、商業地も1・9%から2・8%へと上昇基調を強めた。

 住宅地を圏域別でみると、三大都市圏は1・0%。このうち東京圏は1・3%と4年連続で上昇。名古屋圏が1・2%、大阪圏が0・3%アップした。成長率の高い地方4市は4・4%と6年連続で上昇。前年はマイナス0・1%だった地方圏全体が0・2%となり、1992年以来続いたマイナスから27年ぶりに上昇に転じた。その他はマイナス0・2%だが、前年のマイナス0・5%から減少率を縮めた。

 住宅地の都道府県別では、東京都は2・9%で、区部平均では3・9%から4・8%とやや拡大した。上昇率拡大は荒川区や台東区、豊島区など北側エリアで、商・工業との混在地域でも都心へのアクセスなど利便性と価格のバランスによって需要が出ていることがうかがわれる。一方で、品川区、目黒区など、先行して地価が上昇した中心・南部では上昇率が縮小。特に千代田区は供給量がやや増加したほか、売れ行きに鈍化があり、上昇率が縮まった。

 埼玉県では、鉄道新線が開通したさいたま市が1・9%(前年1・4%)。都区部に隣接する川口市が1・5%(1・1%)で前年の上昇率を上回った。そのほかの市でも堅調さをみせる。一方、上昇となっていたり、下落率縮小を続けている市でも、駅から徒歩圏外になると下落傾向。地点によって価格が細かく分かれている。神奈川県では、川崎市が1・7%(同1・4%)や相模原市1・2%(同0・8%)と上昇幅を拡大させたが、上昇を牽引してきた横浜市は前年と同じ1・0%にとどまった。また県全体では、都心までの距離に応じて上昇率が縮小した。千葉県では、千葉市が1・1%(前年0・7%)となるなど上昇幅が拡大したが、郡部における下落基調が続いた。

 愛知県は、20%以上の上昇率となった地点が6地点に及んだ。名古屋市も2・3%と上昇率を拡大。唯一下落していた港区も上昇に転じて全区でプラスになった。名古屋市や豊田市のベッドタウンである長久手市は上昇幅が4・3%から3・7%に縮小しつつも堅調だった。一方で、もともと過疎化が目立つ地域や湾岸エリアなど津波リスクのある地域では需要が極端に縮小した。

 大阪圏では、大阪市が0・8%と前年の0・6%から拡大。北大阪急行線の延伸が計画されている箕面市では1・5%(同0・9%)と上昇し、地点によっては20%近い上昇率を見せた。京都市では前年の1・3%から2・0%に上昇幅が広がった。中心部にあたる上京区、中京区、下京区、東山区では宿泊施設需要もあり高い上昇率となった。

 地方4市はいずれも前年より上昇率を伸ばした。札幌市は4・0%(同2・3%)。胆振東部地震の影響で液状化などの被害があった地区では地価が下落したが、総じて上昇が続いた。仙台市は5・8%(同4・6%)で、仙台駅や地下鉄駅周辺の地価上昇率が拡大した。広島市は、平坦で周辺に商業施設のある利便性の高い地域で需要増。前年の2・2%から今回は2・7%になった。福岡市も人口増加を背景に5・3%(同4・3%)に。戸建て・マンション用地が堅調に上昇した。

 最も高い上昇率を見せた沖縄県は、那覇市で前年の6・3%から10・6%となった。住環境に優れた都心や市の中心部でマンションや戸建住宅需要が強い。19年夏にモノレールの延伸が計画されている地域の周辺部でも上昇幅が拡大した。

 このほか、福岡市へのアクセスが良好な佐賀県鳥栖市が1・3%(同0・6%)。中心市や空港へのアクセスが良好な大分県速見郡日出町が、若い世代の定住促進に力を入れて住宅需要が高まり、18年ぶりに1・0%と上昇に転じた。地価の上昇が、全国のあらゆる地点に広がっている。だが、公共交通や幹線道路、商業施設から離れていたり、自然災害が想定される地点、山がちなエリアなど、地点によっては下落幅が拡大したところもあり、価格の「個別化」が進んだ。

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