【高校野球】履正社、大会タイ5本塁打も驚異のミート率 データで楽しむ夏の甲子園【第2日目(第1、2試合)】

第101回全国高等学校野球選手権、2日目第1試合、第2試合の結果一覧

履正社の打撃陣はストライクゾーンを7割スイング、9割の確率でバットに当てる

 大会屈指の好投手と大阪予選を勝ち抜いた強打のチームの対戦があった夏の全国高等学校野球選手権大会第2日目となった第1、2試合をセイバーメトリクスの指標で各校の闘いぶりを振り返ってみます。

指標の説明は以下の通りとなっています。

OPS 出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当た
った割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボール
が当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率
WHIP 1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP 1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB フライに対するゴロの割合

履正社 11-6 霞ヶ浦

【履正社】
打率.405 OPS1.276 wOBA0.597
O-swing% 24.1% Z-swing% 73.7% Swing% 51.1%
O-contact% 47.4% Z-contact% 91.4% Contact% 82.0%
Zone% 54.6% SwStr% 9.2%

【霞ヶ浦】
打率.308 OPS.913 wOBA.425
O-swing% 28.7% Z-swing% 63.8% Swing% 43.6%
O-contact% 51.6% Z-contact% 88.2% Contact% 74.4%
Zone% 42.6% SwStr% 11.2%

履正社 投手の各指標

清水大成
5イニング 打者数28 投球数124
WHIP2.60 P/IP24.80 GB/FB 0.88
Zone% 42.6% 空振り率11.2%

岩崎峻典
4イニング 打者数17 投球数64
WHIP1.25 P/IP16.00 GB/FB 12.00
Zone% 48.4% 空振り率10.9%

霞ヶ浦 投手の各指標

鈴木寛人
2回1/3イニング 打者数17 投球数64
WHIP3.43 P/IP27.43 GB/FB 1.17
Zone% 48.4% 空振り率10.9%

山本雄大
6回2/3イニング 打者数30 投球数110
WHIP1.50 P/IP16.50 GB/FB0.86
Zone% 58.2% 空振り率 8.2%

 茨城県大会4試合28イニングで3失点、WHIP0.68、奪三振率9.32、K/BB5.8の好投手、鈴木寛人が大阪大会を勝ち抜いてきた春夏連存続出場の履正社と対戦ということで注目を集めた第2日目の第1戦。立ち上がりいきなり先頭打者の桃谷選手に145キロのストレートをスタンドに運ばれました。

 このイニング、すべてのアウトを三振で奪うのですが、4番井上選手にもホームランを打たれ2失点という大味なスタート。その後はスライダーで空振りを奪うのですが、高めに浮くストレートを履正社打線に狙い撃ちされ、2回1/3イニング、3被本塁打、7失点でマウンドを降りることになりました。なお、履正社はこの試合、大会タイ記録の5本塁打を放っていますが、どれも甘く高めのコースに入った球をしっかりと捕らえていました。ストライクに入った球は7割以上の確率でスイングし、9割の確率でバットに当てるバットコントロールは日頃の練習の賜物でしょう。

 履正社先発の清水投手は序盤にもらった点差からの余裕でしょうか、ストレート75%とスライダー25%の組み立てで霞ヶ浦打線に対峙します。スライダーでは20%以上の空振りをとり要所を抑えていきますが、6回に入るとストレートのコントロールが高めに浮いたり、ストライクボールがはっきりするようになり、甘く入ったストレートで長打を打たれるようになりました。リリーフ登板の岩崎投手は残り4イニングを丁寧なコントロールで霞ヶ浦からゴロの山を築き、フライ1に対しゴロ12という内容で霞ヶ浦の反撃を断ち切りました。

津田学園の前は11奪三振の力投、打たれた7安打は全て単打、静岡2番手の松本は好リリーフ

津田学園 6-3 静岡

【津田学園】
打率.314 OPS.740 wOBA 0.332
O-swing% 20.9% Z-swing% 65.2% Swing% 42.9%
O-contact% 64.3% Z-contact% 88.4% Contact% 82.5%
Zone% 49.6% SwStr% 7.5%

【静岡】
打率.212 OPS.469 wOBA.214 
O-swing% 35.6% Z-swing% 60.9% Swing% 46.5%
O-contact% 56.3% Z-contact% 90.5% Contact% 75.7%
Zone% 43.4% SwStr% 11.3%

津田学園 投手の各指数

前佑囲斗
9イニング 打者数35 投球数160
WHIP1.00 P/IP17.78 GB/FB0.58
Zone% 43.4% 空振り率11.3%

静岡 投手の各指標

松下静
3イニング 打者数17 投球数59
WHIP2.67 P/IP19.67 GB/FB0.56
Zone% 49.6% 空振り率7.5%

松本蓮
6イニング 打者数24 投球数74
WHIP1.00 P/IP12.33 GB/FB0.38
Zone% 47.3% 空振り率10.8%

 津田学園は2回、3回に奪った3点のリードにより終始優位に試合を運んでいきました。津田学園先発の前投手はストレート、スライダー主体の投球ながらどちらの球種でも10%以上の空振りを奪い、9イニングで11個の奪三振となりました。また打たれた7安打すべて単打となり、ビッグイニングとなる要素を作らせませんでした。

 静岡の2番手松本投手は、スライダーを多用した組み立てで、交替後にいきなり4連続奪三振を記録し4回以降津田学園に得点を許すことなく6イニングを投げきりました。スライダーでの空振り奪取率はなんと20%を超えます。静岡は松本投手の好投に応えるべく、8回裏に2安打を重ね1点をもぎ取りましたが、2アウト一塁から試みた盗塁が失敗しイニング終了。この試合ここまで4回連続で成功させてきた盗塁ですが、この土壇場での失敗が命取りとなってしまいました。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。

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