ジープ ラングラーアンリミテッド ルビコン試乗|やっぱりラングラーは陸上最強

ジープ ラングラー

ガチオフローダーをラフロードで一気乗り!

山梨県にある富士ケ嶺オフロードで、ジープ・ブランドの各モデルに試乗することができた。ジープといえば本格オフローダーである「ラングラー」シリーズを筆頭に、チェロキー以下のSUVシリーズでも本格的な4WD性能をアイコンとしたブランドだ。

またインポートカーとしては主要なドイツ勢に比べ価格的にも買いやすいことが魅力となり、若い世代に大きな人気を博している。そんなジープの主要モデルで、普段は試すことができないモーグルやオフロードコースを走ってきたので、その印象をここでお伝えして行くことにしよう。

世界が誇る本格クロカン“ラングラー”をテスト

ジープ ラングラー

こうしたステージで、なんといっても花形となるのは「ラングラー」。サーキットで言えばポルシェやフェラーリ、マクラーレンといった超高性能スポーツカーでアタックするようなものであるから、心が躍った。

用意されたラングラーは3台。3.6リッターV6自然吸気エンジン(284PS/347Nm)を搭載するトップグレード「アンリミテッド・ルビコン」と、同じくV6エンジンを搭載した「アンリミテッド・スポーツ」、そして2リッターDOHCターボ(272PS/400Nm)を搭載するラグジュアリー仕様の「アンリミテッド・サハラ」だった。

ただ正直に告白してしまうと、今回の試乗はちょっとばかり拍子抜けな部分もあった。

なぜならFCAジャパンサイドから、「ゆっくり走って欲しい」とのお達しがあったからだ。ただそれは、ジャーナリストから編集者まで含め不特定多数の、しかもダート未経験者もこれを運転するからという理由だけじゃない。当日は本国からエンジニアが来日しており、特にラングラー・ルビコンに関しては、その走破性の源である「クロールレシオ」を感じながらドライブして欲しい、というリクエストがあったのである。

キモはクロール・レシオだ

ジープ ラングラー

クロール・レシオとは、ジープ開発陣がトルク伝達量を表すために使っている数値だ。具体的にはエンジンのトルクがタイヤを駆動するとき、何倍に増幅されているかを表しており、その数が大きいほど高いトルクが伝わっていることになるのだという。

ちなみにラングラー・ルビコンは「79.2:1」という数値を誇り、チェロキーTHは「51.2:1」。グランドチェロキーTHは「44.2:1」で、レネゲードTHは「20.4:1」とのことだった。ちなみにTHは「トレイルホーク」を意味しており、各グレードの高出力バージョンを意味している。

ラングラーは超ローギアード、激しい傾斜でもなんのその!

ジープ ラングラー
ジープ ラングラー

つまりクロカン・キングであるラングラー・ルビコンは、1速ギア(4.714)×副変速機「4L」(4.0)、そしてファイナルギアレシオ(4.1)を組み合わせるウルトラローギアードなギアリングで、極低速時に高トルクを獲得する。それこそアイドリング+αのエンジン回転でドンドン登って行くから、それを体感するためにも「ゆっくり走ってね!」というのだった。

確かにその言い分は、正しかった。途中小雨も降り始めた急な登坂路で、わざと停まってアシストなしで再発進してみる。ここでラングラー・ルビコンは、最大で30度近くなるという傾斜をホイールスピンすることもなくリスタートしてしまうのだった。

あまりにも、あっけない……。きっとアクセルをベカッ!と踏み込めば、盛大にタイヤを空転させながらも豪快なトラクション性能をもって道なき道を突き進むのだろうなぁ! などと思いつつも、ただこの力強さには感心した。

ラングラーは一般道から悪路までこなすスーパーカーだった

ジープ ラングラー

そのアクセル開度の小ささに対するトルクの出方はリニアで力強い。一般道ではシュンシュンと気持ち良く回ったV6エンジンのキャラが、うそのようだった。

確かにこの操作性なら微妙なアクセルワークを駆使して、巨大な岩場を登り切ってしまうかもしれない。そしてこれなら我々一般のユーザーが使う上でも、凍った路面や雪上路で安心してマイペースを保つことができるだろうと感じた。

もっとも「4L」に入れるようなシチュエーションは、なかなかないだろうけれど。

また登り同様に急な下り路面では、ヒルディセントコントロールが8速ATと見事に連携した。車速はシフトレバーで段階的に時速8km/hまでコントロール。ブレーキロックの心配なくハンドリングに集中できるのは非常にありがたく、ゆっくり坂道を下ってくれるから安心感も非常に高い。

そしてモーグル路面では、スウェイバー(スタビライザー)をオフにすることで、サスペンションが伸びて接地性が高まる状態を体感できた。

ラングラーの走破性が高すぎて全ての実力は把握できず……

だがしかし、はっきり言ってしまえばラングラー・ルビコンはその走破性が高過ぎて、今回のメニューだとその真価を味わい尽くすことができなかった。

同じV6ユニットでもよりデイリーユースを意識したギアリングのベースモデル「アンリミテッド・スポーツ」や、2リッターターボを搭載するラグジュアリーモデル「アンリミテッド・サハラ」でさえ、大差なく同じように走れてしまうのだ。

2Lターボが実は一番力持ち! 日本にも2リッターのルビコンがほしい……

ジープ ラングラー

ちなみにサハラの2L直列4気筒ターボは、かなり好感触だった。

ジープ ラングラーのルックスからして、より大排気量で多気筒なV6エンジンの方が“らしい”感じがするものの、実際のトルク特性は400Nm/3000rpmと、V6ユニット(347Nm/4100rpm)よりも低回転で高トルクを発生するのである。

だからギアリングの違いはあっても、パワーよりトルクが求められるこのシチュエーションでは、その差を十二分にカバーして走ることができた。

むしろルビコンのV6ユニットは、オンロードにおける高回転領域の吹け上がりが気持ち良かった。

参考までに燃費性能的には、2L直4のサハラが11.5km/Lと、3.6V6のルビコン(9.0km/L)に対して分がある(共にJC08モード)。しかしこの両者、いや今回乗った全てのモデルがなのだが、実はレギュラー仕様である。

サハラで日常のドライバビリティと経済性を取るか、ジープとしての“本物感”を手に入れてより趣味性を高めるか。ここはなかなかに楽しい悩み所だ。ちなみに本国には、2リッターターボの「ルビコン」も設定されている。

グランドチェロキー/チェロキー/レネゲード…どれも悪路は無敵だ

ジープ グランドチェロキー
ジープ チェロキー

今回はこの他にもグランドチェロキー/チェロキー/レネゲードの“トレイルホーク”に試乗することができた。

ジープ ラングラーに乗った後では、これらのSUVがまるでふわふわとした高級サルーンのように感じられた。

裏を返せばオフロードにおけるダイレクトな乗り味や操作性の高さは、快適性につながることが理解できた。

そうは言ってもチェロキーなどのトレイルホークは、SUV目線で見ればやはり悪路走破性が高い。「4WD LOW」モードを選べば駆動はしっかりと確保され、デコボコ道ではサスペンションを上手に伸ばして姿勢を保つ。

こうした性能より、もっと広さやラグジュアリー性能が欲しいと考えればグランドチェロキーがベストだ。そこには単純なヒエラルキーというよりも、段階的なニーズ対応への幅広さがあるように感じられた。

小さいからって侮るな! レネゲードだって余裕で悪路を走れるんだ

ジープ レネゲード
ジープ レネゲード

また今回一番小さなレネゲードも、兄貴分と同じく「セレクテレイン」システムを備え、4WD LOWのギアリングを持って悪路を元気に走ってくれる。

オンデマンド式4WDの制御が兄貴分たちに比べやや荒く感じられたのは、1.3リッターの小排気量から270Nm/1850rpmのトルクを発揮するエンジン特性ゆえか(パワーは179PS)。前輪を少しかきむしってからトラクションを安定させる様子はややチープだったが、ナローなボディと高いアイポイントによって操作性は良好。むしろこの荒さと小ささのカップリングには、ちょっとした冒険感が味わえた。

また日常ユースで考えれば、冬場の降雪にも過不足なく対応できる手応えも感じ取れた。

つまりジープとは、ラングラーの走破性をDNAに持つことで、SUVながらもバリューを高めるブランドなのだ。今回はそれがよくわかる試乗であった。

乞うご期待! ラングラーを更なる本格オフロードでテスト

ジープ ラングラー

しかしホンネを言えば、やっぱりちょっと食い足りない。

ラングラーが持つ真の実力を味わってこそ、ジープ・ブランドを本当に理解することができるはずだからだ。そんな風に思っていたらFCAジャパンから、イタリアで開催される「キャンプ・ジープ」の誘いを受けた。

果たしてそこで見えたものは……まさにジープというクルマが持つ、現代における意義や魅力そのものだった。その詳細は、追ってみなさんにお伝えすることにしよう。

[筆者:山田 弘樹/撮影:佐藤 正巳]

Jeep WRANGLER UNLIMITED 主要スペック

ジープ ラングラー
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