描いて知る旧吉田茂邸 大学生企画、子どもらが力作

旧吉田茂邸の庭園をスケッチする子どもたち

 かつて「政界の奥座敷」と呼ばれた舞台の一つ、旧吉田茂邸(大磯町西小磯)を子どもたちがスケッチする催しが9日、同所で開かれた。産業能率大学(伊勢原市)の学生がイベントのプログラムを企画し、案内役として子どもたちに「昭和の大宰相」の功績を紹介。小中学生らの力作は今後、来場者らに配られる記念品にプリントされ、大磯のPRに一役買う。

 昨年に大磯町と同大が協定を締結した縁で「若い人たちになじみの薄い吉田茂のことを知ってほしい」(町担当者)と初めて企画された。町内外から12人の小中学生が参加し、クイズ形式でサンフランシスコ平和条約やバカヤロー解散など、吉田にまつわるエピソードを学生が解説。その後、吉田邸の敷地内を一緒に回り、写生スポットを探した。

 海外の要人ももてなした食堂「ローズルーム」や首相官邸と直結した黒電話も置かれていたという書斎などを、子どもたちは鉛筆で思い思いにスケッチ。吉田の寝室でもあった「銀の間」から外の景色を描いた児童(10)は「吉田茂の邸宅があったのは大磯の誇り。吉田茂が過ごした場所できれいな海と山の風景を描けてよかった」と喜んだ。

 この日の催しは同大で情報マネジメントを学ぶ学生10人がプログラムなどを2カ月かけて練った。日頃は地元のこども食堂や小学校の授業も手伝い、「子どもと接するのは慣れている。楽しく学んでもらえるように工夫した」と同大3年の学生(21)。同じく3年の学生(21)も「人に何かを教えるということを実践的に学ぶことができた」と成果を実感していた。

 子どもたちは10月に行われるプログラミング体験会にも参加。同大の別の学生らの指導で今回の絵をCG(コンピューターグラフィックス)に読み込み、加工技術などを学ぶ。さらに秋以降、優秀作品はクリアファイルにプリントされ、来場者への記念品として配られる予定。同大の准教授は「学生が大学で学んだことで地域に恩返しができれば」と期待した。

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