【甲子園】成の夢は家族の夢 東海大相模・遠藤投手の両親

アルプススタンドで東海大相模ナインに声援を送る、先発した遠藤の母親の道代さん(中央左)、父親の成人さん(同右)=甲子園

 11日に甲子園球場で行われた高校野球の全国選手権大会で初戦を突破した東海大相模。立役者となった遠藤成(じょう)投手(3年)は、2015年夏の全国制覇で同校に憧れを抱き、秋田から単身、神奈川にやってきた。アルプス席に秋田から駆けつけた両親は、わが子の成長に目を細めた。

 遠藤投手は先発して八回途中1失点、打っては2安打。次男の活躍に母・道代さん(48)は「どきどき。勝ててほっとした」と愛息そっくりの笑みをはじけさせた。

 「何かを成し遂げてほしい」との思いから付けられた名は「成」。秋田・金足農高で投手として活躍し、社会人のTDKでもプレーした父・成人さん(47)の背中を追ってきた。中学時代には地元のクラブチームを投打で引っ張る「二刀流」として、全国大会に導いた。

 コピー用紙に筆書きして、自室の壁に貼った目標は「甲子園優勝校に入る」。運命の出会いは中学2年の夏だった。甲子園の頂点に立った東海大相模の躍進をテレビで見届け、「俺、ここに行く」と宣言。東北各県の強豪校の誘いを断り、激戦区・神奈川に乗り込んできた。

 「まだまだ中身は幼い子ども」とみていた母の「不安」は、入部わずか数週間で現実となったという。携帯電話にぽつりと一言、「ホームシック」とメッセージが届く。珍しい弱音に「でも、自分が選んだ道でしょ」と返すと、「だね」。寮で自立した生活を送り、レギュラーの座もつかんだ。ある日、家族で食事に出掛けると「俺が予約するよ」とスマートフォンを手に取った。息子の成長を感じた瞬間だった。

 成人さんは高校時代、夏の秋田大会8強で敗退しただけに「ここでプレーする姿が見られるだけでうれしい。これでまた、目標に近づいた」と感慨に浸る。成の夢は、家族の夢。成し遂げるための夏は続く。

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