詐欺防止へ即席掲示板、横浜 町内会の取り組みが評判

特殊詐欺被害を防ごうと柳町町内会の住宅フェンスに掲出されたチラシ入りのファイル=横浜市金沢区

 特殊詐欺の被害防止へ、横浜市金沢区の柳町町内会の取り組みが注目を集めている。手口や被害状況を書き込んだチラシをクリアファイルに入れた上で、住宅の塀やポストなどに掲示し、道行く住民に注意喚起する手法を考案。家々を即席の掲示板とする「柳町方式」は評判を呼び、近隣の町内会が採用に向けて動きだした。

 約850世帯が加入する同町内会の閑静な住宅街を歩くと、軒先に取り付けられたクリアファイルが目につく。「『キャッシュカードを預かります』は詐欺」「訴訟最終告知のお知らせには注意」-。中に入れられたチラシにはそんな文言が印字されている。

 「抑止効果につながれば」と胸を張るのは富川清会長(82)。取り組みの原型は5年ほど前にさかのぼる。

 地域行事を周知しようとチラシを入れるためのファイルを役員約30人の自宅前に取り付けた。それまで周知に活用していた掲示板は町内に4カ所だけ。新設費用を考えると、各住宅やポストを活用する方が有効と判断した。防水強化のためファイルを2枚使った場合でも、1セット400円程度で済むという。

 掲出するチラシは、金沢署が作成したもので、その時々の最新の情報が盛り込まれている。掲示期間はこれまで協力世帯の判断に任せていたが、今春から見直し、可能な限り常時設置してもらうよう強化した。

 署によると、2018年以降、同町内会での特殊詐欺の認知件数はゼロという。取り組みとの因果関係は不明としつつも、「住民の意識は非常に高い」と署も強調する。

 他の町内会も視察に訪れるなど熱視線を送る。今後、近隣の6町内会が同様の取り組みを始める見通しだ。金沢防犯協会は柳町方式を参考にしてもらおうと、区内の約170町内会にファイルを無償で配った。

 横行する特殊詐欺を「卑劣」と断じる富川さんは「被害に遭ったことを誰にも相談できず、結果的に家族から責められるケースもあると聞く。そんなことがあってはならない」と語気を強め、こう願った。「1件でも被害を減らしたい。モデルケースとなり、注意喚起の輪が広まれば」

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