『感染家族』 怖さより、笑ってしまうゾンビ映画

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 『新感染 ファイナル・エクスプレス』の成功により、韓国では今ゾンビものが大流行りで、Netflix制作の時代劇『キングダム』も世界的にヒット。“Kゾンビ”ブームと呼ばれているらしい。本作もその流れをくむユニークな一本だ。主人公は、田舎の寂れたガソリンスタンドで暮らす一家。突然現れたゾンビに噛まれた父親がなぜか若返ったことから、一獲千金のゾンビ・ビジネスを思い立つ…。というわけで、怖さやスリルよりも笑いの立ったホラー・コメディーである。

 この手のジャンル映画には、演出に遊びや創意工夫を凝らしてもリアリティーが損なわれにくいという利点がある。特に本作の場合は、かなり強引な設定と濃すぎるキャラたちの相乗効果をしっかりと笑いに転嫁できている分だけ、細部の自由度が高い。例えば、ゾンビがメイクで美少年に変身したり、人間の脳ミソと勘違いしてキャベツをバリバリと食べまくったり、花びらやダウンジャケットの羽毛が画面いっぱいに乱舞したり、声がマンガのように文字となって飛び出したり、さらにはゾンビが音に敏感なことから花火がクライマックスで効果的に使われていたり…と、視覚と聴覚の両方に訴えかける楽しさでいっぱいなのだ。それはどこかミュージカル映画の魅力に通じるように思う。歌ったり踊ったりはしないけれど、ミュージカル好きもぜひ観てほしい掘り出し物だ。★★★★★(外山真也)

監督:イ・ミンジェ

出演:キム・ナムギル、チョン・ジェヨン、オム・ジウォン、パク・イナン

8月16日(金)から全国順次公開

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