誤解されまくった筋肉少女帯「日本印度化計画」が一人歩きする! 1989年 7月5日 筋肉少女帯のサードアルバム「猫のテブクロ」がリリースされた日

筋肉少女帯のアルバム『猫のテブクロ』の発売は1989年7月5日。この時期はバンドブームで波に乗っていた筋肉少女帯。大槻ケンヂのラジオ繋がりで、伊集院光もゲスト参加している。このアルバムの演奏時間は30分弱。

かなりヒットしたアルバムだが当時のファンは「なんだよ、インディーズ時代の曲ばかりじゃないかよ」と最初は思ったのであった。

だが、ヒットの要因は新曲の「日本印度化計画」だった。日本を印度にしてしまえ! で始まるこの曲は、筋肉少女帯を好きじゃなくても当時の子供達は皆知っていたはずである。ラジオでは毎日どこかで流れていたし、当時、大槻ケンヂは “しゃべれるバンドマン枠” でテレビに出まくっていたからだ。

陳腐な言い方をすると、「日本印度化計画」の前にもコミカルな曲は色々あったが、この曲の破壊力はそれを上回る凄さがあった。そして、この曲が有名になりすぎたせいで筋肉少女帯はコミックバンド的な扱いになっていく。

筋肉少女帯のファンは、ファンである事を隠すようになっていく。このようなコミックバンドという見方をされる事に疲れていたのだ。もっと言うと「ファンと公言すると恥ずかしい」みたいな感じだ。

このアルバムを通して聴くとわかるが、「日本印度化計画」だけが抜きん出た売れ線狙いで、他の曲はシビアであり大槻ケンヂの脳内を集約したアルバムになっている。たとえば、バカボンのパパの名台詞「これでいいのだ」をタイトルにした曲は冤罪をテーマにしているし、「星の夜のボート」は泣きのメロディーで、まさに詩人的な歌詞になっている。

その一方で、「Picnic at Fire Mountain ~Dream on James, You're Winning~」、「Go! Go! Go! Hiking Bus ~Casino Royale~, ~The Longest Day~」、「最期の遠足」いわゆる遠足の曲3部作は軽やかに始まるが、結局最後に子供達は遠足で死ぬ… というどうしようもなく救いがない内容。筋肉少女帯らしいふざけた曲だと思わせておいて、この締めくくりよう…。

そうかと思えば、ラストはプログレ全開。明るい曲は「日本印度化計画」だけという、実は重すぎるアルバム。しかも演奏が上手すぎる。

だが、当時のロック業界はバンドブームだったし、一人歩きする「日本印度化計画」でコミックバンド的な位置を確立するという、今思えば気の毒な状況に。繰り返すが、ファンもファンである事を隠す状態になった。

もちろん、今はこのアルバムがお笑いのアルバムでない事は皆知っている。むしろ日本のロック界で名盤扱いになっている。とても聴きやすい構成だし、理解しやすいのが特長なので、若い方にぜひ聴いてほしい一枚だ。

カタリベ: 鳥居淳吉

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