盆と花火

 地元ではごく当たり前の風習を、県外の人に話すとびっくりされることがある。お墓でにぎやかに花火をする長崎の盆の光景はその一つだろう▲中国から伝わったという説がある。きょうはお盆の中日で、あす県内各地である精霊流しも、中国から渡ってきた送り盆の行事が長崎風に変わったとされる▲往年のヒット曲、グレープの「精霊流し」について、さだまさしさんは3年前、本紙などに載ったエッセーで書いている。その曲調から〈静かでしめやかな灯籠流しを連想し、実際の精霊流しの騒々しさに驚いた人が随分あった〉▲中国伝来の習わしだとしても、お墓の花火や精霊流しの爆竹音は、亡き人、ご先祖が寂しくないよう心を配る、長崎人の“演出”のようでもある。にぎやかさは思いの深さの表れだろう▲8月は戦争や死を思うことがとりわけ多い。二つの「原爆の日」があり、亡き人を近くに思うお盆に入り、終戦の日が巡り来る。毎年そうだと分かっていても、暦でこの並びを見れば切ない▲あすは精霊船が運ばれる頃、玄関先や公園の隅で線香花火を手にする姿も見られるだろう。〈手向(たむ)くるに似たりひとりの手花火は〉馬場移公子(いくこ)。仰ぎ見る打ち上げ花火と違い、うつむいて見る手花火(線香花火)は人を追想へと誘う。静かに眺める花火もある。(徹)

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