知っているようで知らなかった!? 各メーカーエンブレムの由来

マツダ CX-5

どこのメーカーのクルマかすぐにわかる“統一フェイス”とエンブレム

どんな自動車メーカーも、独自のエンブレムを持っていますよね。エンブレムはメーカーごとの由来や個性、ブランドを表現する、重要なアイテムでもあります。昔から採用している図案もあれば、長い歴史の中でガラッとデザインを変えてしまう例も。

で、「そういえばあのメーカーのエンブレムって、どんな意味があるんだろう」って思ったことはありませんか? そこで、当記事では、エンブレムに込められた意味、秘められたストーリーなどを探ります。

BMW:“プロペラ”を図案化したエンブレムにも諸説あり?

BMW 新型3シリーズ BMW 320i M Sport

黒い円の中に、十字で切られた青と白が配されたBMWのエンブレムは、一度見たら忘れられない印象的なデザインです。

由来には、BMWの前身企業のエンブレムとBMWの生まれ故郷ドイツ・バイエルン州の州旗の色である「青×白」を組み合わせた、という説、そして一般的に知られるプロペラを図案化したものなど諸説ありますが、BMWでは後者を公式見解としているようです。

アウディ:前身4社が統一してできたエンブレム

アウディ A8 55 TFSI quattro

アウディのグリルに輝く4つの輪、その名も「フォーリングス」は、アウディの前身企業、DKW(デーカーヴェー)、Wanderer(ヴァンダラー)、Horch(ホルヒ)、そしてAudiの4社が合併して生まれた「Auto Union AG」(アウトウニオン)のエンブレムで、1932年に制定後、現在も継続して使用中です。なおアウディは1965年以降、VWグループに属しています。

アルファ ロメオ:ミラノ市の紋章や貴族の家紋を反映

情熱的なクルマづくりで人気が高いアルファロメオの歴史は古く、1910年設立の「ロンバルダ自動車製造株式会社(=A.L.F.A)」に端を発します。

その後同社の経営権を実業家ニコラ・ロメオが獲得したことで、1918年に「アルファ・ロメオ」という社名が生まれていますが、アルファ ロメオのエンブレムは1910年のA.L.F.A.時代から使用されています。左半分の十字は発祥の地・ミラノ市の紋章を、右側の「人を食べる蛇」は、ミラノの名家「ヴィスコンティ家」の家紋に由来します。

シトロエン:創業時の製品がそのままエンブレムに

シトロエンのエンブレムは、ひらがなの「へ」が2段重なったようなデザインです。この意匠は、同社の創始者、アンドレ・シトロエンが最初に起こした会社で製造していた「山形歯車(ダブルヘリカルギア)」を図案化したものです。

クルマの製造でスタートしていないのは意外ですよね。しかも歯車の後は第一次世界大戦で不足していた砲弾の製造を行いました。彼はエンジニアではなく、機を見てすぐさま行動する経営者だったのでした。「へへ」マークも、幾度かのデザイン変更を経て、現在は少し丸みを帯びた意匠になっています。

プジョー:案外知られていない、エンブレムがライオンの理由

プジョー 新型508 GT Line(1.6リッターガソリンターボ/ボディカラー:セレベス・ブルー)

世界で最も古い自動車メーカーに数えられるプジョー。エンブレムといえば「ライオン」ですが、プジョーの祖先はなんと15世紀ごろから水車を用いた粉挽きを生業としており、19世紀に入ってからはコーヒーミルなど鉄製品の製造に注力を開始しています。

すでにこの頃には、ライオンマークが製品に刻まれているのですから驚きです。プジョー製品の刃が「切れ味鋭く堅牢」であることを、ライオンの歯に例えたのでした。しかし全てにライオンマークが入っていたわけではなく、ライオンは最高品質の鋼を使用した製品のみ、それ以外の鋼には製法に合わせて三日月、手など、いろいろなマークが彫られていました。

ロータス:エンブレムに刻まれた“ACBC”の意味とは

ロータス エヴォーラGT430スポーツ

世界に冠たるスポーツカーを生み出し続けるロータス。エンブレムには「LOTUS」の他に「ACBC」の文字が刻まれています。このACBCとは、創業者のアンソニー・コーリン・ブルース・チャップマンのイニシャルです。

1982年の死後、「ACBC」一時期エンブレムから外されていましたが、後に復活。現在のデザインへとつながっています。なお、ロータスとは「蓮」を意味します。チャップマンがこの植物を社名に選んだ理由は諸説ありますが、本当の意味は明らかになっていません。

日産:ダットサン由来の伝統が今に生きる

正円の上を横切る四角い土台に「NISSAN」の文字が打たれる日産のエンブレムは、かつては丸い部分は太陽を示す赤色、四角い部分は天空を意味する青色が塗られていました。

このデザインはそもそも日産の前身、「ダットサン」が使っていたもの。1914年設立の日本初の自動車メーカー「快進社」が作ったクルマは、支援者3人の頭文字を取った「DAT」と「逃げる兎=脱兎」をかけて「脱兎号」と名付けられました。快進社がダット自動車になった後、新たに開発された小型車は「ダットソン(息子)」と命名されましたが、「ソン」が「損」に感じられることから、「ダットサン(太陽)」になったという逸話が残っています。

スバル:プレアデス星団の和名がそのまま社名に

スバル アウトバック エンブレム

スバルのエンブレムには煌く星が六つ描かれています。これは、プレアデス星団を図案化したデザインで、プレアデス星団は日本語で「昴(スバル)」。別名、六連星(むつらぼし)とも呼ばれます。

第二次大戦中に数々の傑作機を生み出した中島飛行機を出自に持つスバルは、つい先般まで社名は「富士重工業」でした。中島飛行機は敗戦によって非軍需品を作る「富士産業」へ転身するも、1950年の財閥解体により多くの会社に分割されてしまいます。しかしその数年後には旧中島飛行機系会社5社の再編が進み、1953年に富士重工業が発足。エンブレムは、これら5社と富士重工業の計6社を、プレアデス星団の星の数になぞらえたもの、といわれています。

ここでは、9社のエンブレムに関するお話をお送りいたしました。「へえー! そうなんだ!」という内容もあったのではないでしょうか。

気になるエンブレムはまだまだ多くありますので、またの機会に、改めてご紹介したいと思います。

[筆者:遠藤 イヅル]

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