富山市スマートシティ実証実験 民間から22件参加申請

 IoT(モノのインターネット)技術をまちづくりなどに生かす「スマートシティ」の実現に向け、富山市は9月から、民間事業者による実証実験に取り組む。市全域を網羅するデータ収集システムの活用法を探るもので、参加者を募ったところ、16日の締め切りまでに県内外から22件の参加申請があった。全国でも先進的な取り組みで、市は新産業の育成や市民サービス向上につなげたい考えだ。 (政治部・小林大介)

 実験に使うのは、市が今春完成させた「富山市スマートシティ推進基盤」。国の支援を受け、約2億4千万円を費やして整えた。

 学校や地区センター、防災無線柱など公共スペースの98カ所に、受信アンテナを設置。受信範囲内にセンサーを置いて情報を集め、データベース「IoTプラットフォーム」に蓄積し、分析して活用する。

 アンテナは、市民が暮らす地域の98%をカバーしているのが特徴だ。総務省によると市全域を網羅するケースは他に例がなく、人や物に関する幅広い情報を収集できる。個人情報は許可無く集めることはない。

 市はこれまで、子どもの安全安心のため、児童の登下校時の位置情報を集める実験に着手。市道の消雪装置の稼働状況を遠隔地からチェックする実験も予定している。

 さらに活用法を探ろうと、民間にも実証実験の環境を提供することにした。9月1日~来年2月28日の6カ月間、無償でシステムを活用してもらう。

 参加申請があった22件はITや福祉、農業分野などの企業・団体によるもので、人の往来や水位を測定するなどの実験を希望。複数企業がグループで申請したケースもある。

 市は審査し、8月下旬に参加者を決める。実験で得たデータは、事業者がIoT技術を用いたセンサーの開発などビジネスに利用できる。市は許可を得て、オープンデータとして公開することを検討している。

 市情報統計課は「行政だけではアイデアが広がらない。実験で成果を出してもらい、市の施策などに生かしたい」としている。

旧安野屋小学校体育館の敷地にある受信アンテナ(柱の最上部)=富山市内

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