配置薬販売を広域統合 廣貫堂と岐阜の河上薬品商事

新会社設立に向け握手する(左から)塩井、河上、平井の各氏=廣貫堂

 配置薬業界で県境を越えた再編が進む。廣貫堂(富山市梅沢町、塩井保彦社長)と岐阜県の販売会社は来春、顧客に配置薬を直接販売する部門を統合し新会社を設立する。業界の市場縮小が続く中、販売網の広域統合で効率を高め、新たなビジネスモデルの構築を目指す。関係者によると、県内の配置薬業の広域統合は前例がないという。合流を模索する社が他にも複数あり、業界再編の呼び水になりそうだ。

 個人宅・事業所向けに薬や健康食品を販売する廣貫堂子会社の広貫堂薬品販売(富山市東中野町、平井裕社長)と河上薬品商事(岐阜県関市、河上宗勝社長)が出資し、新会社「広貫堂河上薬品(仮称)」を来年4月1日に設立する。本社は富山市内に置く予定。資本金や出資比率は今後詰める。

 両社で重複する取扱商品や販売システムを一本化。22都道府県の営業拠点については重複する拠点を統合し販管費を圧縮する。配置員1人当たりの生産性を高めたい考えだ。

 配置員は広貫堂薬品販売が128人、河上薬品商事が136人おり、いずれも新会社に転籍する。得意先は広貫堂薬品販売が約11万1千件、河上薬品商事が約13万件。新会社が引き継ぎ、売り上げ規模は単純合算で年間32億円を見込む。

 新会社は、他社に合流を呼び掛けるとともに業態改革の旗振り役を担う。健康寿命延伸に役立つ「コンシューマー(消費者)ヘルスケアコンサルティング」をビジョンに掲げ、超高齢化社会に対応。モノのインターネット(IoT)や顧客情報の活用、電子商取引(EC)サイト連携を通じ、配置薬業の新たな仕組みづくりを進める。

■業界挙げて苦境克服

 県内の製薬企業3社の配置薬卸売部門を統合し昨年事業を始めた富山めぐみ製薬(富山市三番町)に続き、小売り分野でも再編の動きが明らかになった。富山と岐阜の2社が率先して統合することで業界を挙げて苦境克服に取り組む必要性を他社に示す狙いがある。

 今回手を結んだ廣貫堂の塩井氏と河上薬品商事の河上氏は全国配置薬協会(全配協)の幹部を務める。塩井氏が会長、河上氏は販社を束ねる配置部会長だ。全配協が掲げる「オール配置」による業界活性化に向け「先行事例を示す必要があった」(塩井氏)。

 業界は従事者数や生産量の減少傾向が続く。河上氏は統合について「業界に元気を与えるような起爆剤にしたい」と話す。新会社の知名度を高めて担い手確保を容易にするため、株式上場を目指すという。「先用後利」の精神を次代につなごうと業界の生き残りを懸けた取り組みが本格化する。 (経済部・池亀慶輔)

© 株式会社北日本新聞社