作新学院打線は空振り率も低く最後まで集中した打撃姿勢を見せた
台風10号の影響で1日順延となった夏の全国高校野球選手権大会第10日(8月16日)。朝5時まで強い雨が降り続いていたにも関わらず、午前8時には試合ができる状態に。「神整備」と称される阪神園芸の並々ならぬ努力が伺えます。そんな状況で実施された3回戦最初の2試合をセイバーメトリクスの指標で振り返ってみます。
使用している指標の説明は以下の通りとなっています。
OPS 出塁率+長打率 1を超えると優れている
wOBA 各プレーの得点価値を累積して算出した打撃指標
O-swing% ボールゾーンに来た球をスイングした割合
Z-swing% ストライクゾーンに来た球をスイングした割合
Swing% スイングした割合
O-contact% ボールゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Z-contact% ストライクゾーンに来た球をスイングした際にバットにボールが当たった割合
Contact% スイングした際にバットにボールが当たった割合
Zone% ストライクゾーンを球が通過した割合
SwStr% 空振り率
WHIP 1イニングあたりに許したランナーの数
P/IP 1イニングあたりに投球した球の数
GB/FB フライに対するゴロの割合
○作新学院 18-0 岡山学芸館
【作新学院】
打率 .432 OPS 1.118 wOBA .483
O-swing% 8.8% Z-swing% 57.0% Swing% 32.7%
O-contact% 66.7% Z-contact% 93.0% Contact% 89.4%
Zone% 49.5% SwStr% 3.5%
【岡山学芸館】
打率 .077 OPS .350 wOBA .200
O-swing% 14.3% Z-swing% 61.7% Swing% 41.5%
O-contact% 66.7% Z-contact% 94.0% Contact% 89.8%
Zone% 57.0% SwStr% 4.2%
○作新学院・林勇成投手の各指標
7回2/3 打者数29 投球数114
WHIP 0.91 P/IP 14.87 GB/FB 1.57
ストレート77.9% スライダー19.5%
Zone% 56.6% 空振り率 3.5% 内角 33.6% 外角 35.4% 高め 43.4% 低め 39.8%
筑陽学園(福岡)との2回戦では10回を1人で投げ抜いた林投手。その試合では外角44%、低め46%という組み立てでしたが、岡山学芸館戦では、ストレート78%、外角35%、高め44%と内角高め意識した強気の投球を披露します。対策として、岡山学芸館の4番・長船選手がベースから遠くに立って構えたほどです。林投手は6四死球を与えたものの、8回2死まで無安打投球を続けました。岡山学芸館の金城選手に初安打されたところで三宅投手に交代。2投手のリレーで完封勝利を収め、ベスト8進出に貢献しました。
大差はつきましたが、作新学院打線はO-swing% 8.8%、空振り率 3.5%と、粗い打撃にならず最後まで集中した攻撃姿勢を見せていたことも見逃せません。
中京学院大中京・不後、光る変化球の切れ、東海大相模の1年生・石田も合格点の投球
○中京学院大中京 9-4 東海大相模
【中京学院大中京】
打率 .405 OPS .932 wOBA .409
O-swing% 26.6% Z-swing% 66.0% Swing% 46.3%
O-contact% 68.0% Z-contact% 91.9% Contact% 85.1%
Zone% 50.0% SwStr% 6.9%
【東海大相模】
打率 .270 OPS .747 wOBA .360
O-swing% 22.8% Z-swing% 72.4% Swing% 48.8%
O-contact% 44.4% Z-contact% 87.3% Contact% 77.8%
Zone% 52.4% SwStr% 10.8%
○中京学院大中京・不後祐将投手の各指標
6回1/3 打者数28 投球数112
WHIP 1.42 P/IP 17.68 GB/FB 1.38
ストレート45.5% スライダー29.5% カーブ12.5% フォーク10.7%
Zone% 53.6% 空振り率 14.3%
○東海大相模・石田隼都投手の各指標
5回 打者数21 投球数93
WHIP 1.20 P/IP 18.60 GB/FB 2.75
ストレート57.0% スライダー26.9% チェンジアップ16.1%
Zone% 53.8% 空振り率 8.6%
東海大相模の先発、石田投手のコース別割合は外角69%、高め50%でした。高めのストレートでファウルを誘い、低めのストレートでゴロに打ち取り、チェンジアップで空振りを取るという組み立てで、5回を被安打5、5奪三振、与四死球1、WHIP1.20の1失点。1年生ながら先発としての役割を果たしたといえるでしょう。
中京学院大中京が猛反撃に出たのは7回でした。東海大相模の継投策に対して、甘く入ったストレートやスライダーを逃さずとらえ、8安打を集中して7点を挙げて試合の主導権を握りました。OPS.932は2回戦の北照(南北海道)戦の.732を上回りました。
中京学院大中京の不後投手は先発として5回2/3を2失点で一度は降板。左翼の守備に就きましたが7回1死から再登板し。2人の出塁を許したものの2/3回を無失点に抑えました。不後投手のスライダーでの空振り率は18%、フォークで25%、カーブで29%と、変化球の切れの良さがデータに現れています。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。