ママたちが被災地の親子を応援するプロジェクト 「サン・サポート岡山」のこれまで

ママが中心の支援グループ

「サン・サポート岡山」は、平成30年7月豪雨発災後、岡山・倉敷市内に住むママ3人で立ち上げた。子育て中のママを中心に、現在も活動している。当時は、炊き出しなど現地に行けないママたちで、家で使っていない新品のベビーカーや吸入器などを物資として届けること、マッチングすることからスタートした。インターネットサービスLINEを使い、「支援をほしいママ」「支援したいママ」に登録してもらった。

 

物資提供に始まり、支援のニーズを細かく拾い上げる

 発災直後、すぐに物資を集め始め、インターネット上で物資を寄付できるサービス「スマートサプライ」も活用。夏休みとなったことから、休みの間に2学期に使える「小学校や幼稚園に持っていける袋を届けよう」と呼びかけを行った。布を提供する人・縫う人・仕分けをする人を募った。そして、日々変わっていくニーズに応えたり、親子でお泊りするイベントを開催した。

被災した自宅の片付けや大きな生活の変化で疲れたママに、マッサージやエステ・ネイルなどでリラックスした時間や、子どもたちには、外で思い切り遊べる場を提供した。物資で届いた衣服は、ありがたいと思いながらも、どう組み合わせて着ればわからないという声を聞き、スタイリストに来てもらい「ファッションコーディネートの会」を開いたこともあった。

当初はママを対象に支援をしていたが、状況の変化とともに、被災地で困っているママ以外の人にもLINE登録をしてもらい、毎月イベント案内を発信している。気軽に参加してもらい、雑談をするだけの時間でも有意義になることも多い。支援者からみれば、被災者の状況把握になる。また被災者同士は、状況共有する場となることもある。その中で、気持ちが少しでも楽になることや新しいヒントをもらうこともあるという。

被災者との距離が近い

 LINEの運営をするスタッフは「一人ずつ名前をなるべくおぼえるようにしている。直接会った時に、できる限り寄り添った声がけを心がけている」。被災者に積極的に声をかけ、写真を一緒に撮ったり大笑いしたりして、仲間のように過ごすスタッフも多い。

被災者が本当に困っていることは、仲良くなってからでないと聞けないことが多い。コミュニケーションの大切さを実感している。もっと被災者との距離が近く、頼りたいと思える存在になれるように努力している。

今年1月に箭田幼稚園横に拠点を開設

地元企業の協力により、真備町・箭田地区に拠点を設けた。5、6人の大人が入れるほどの大きさの拠点。公民館を借りてイベントをしていたので、「真備町の人がいつでも気軽に立ち寄れる場所」を作ることが目的だった。リラックスしてもらうサービス提供のほか、春には雛祭り、端午の節句の飾りづくりなど、人が集まれるイベントを開いた。拠点ができたことで、被災者同士がイベントをきっかけに交流を深めていく。認知が広がり、同団体で一緒に支援してくれる人も増えている。

 

被災から一年 

支援をしてきたスタッフの中には、子どもが保育園へ行くようになり職場復帰をした人もいる。真備町に行き活動してきたメンバーが、行けなくなることも多くなったことから、被災者がメンバーになってくれて、「一緒に何かをしていく」という方向に変わってきている。

 

子どもたちに危機管理意識を持ってもらうために

災害時に医療機関などで目にした「トリアージファイル」。トリアージとはフランス語で「選別」を意味する。災害時に多くの傷病者が出た時に、優先順位を赤、黄色、緑、黒で分けることができる。この色分けを使った子ども向けのポケットファイル。宿題、お便り、プリントを重要度に分けて分類する訓練になる。災害時に得た知識を元に考えられたファイルを作ることを決めた。

 

災害が起こる前からしっかりつながっていける仕組みづくり

 東日本大震災の例からみても、数年間にもわたる支援が必要となる。物資を送り続けることだけではなく、真備町に戻って来る人々が、自立して本来の生活あるいは今以上の生活をおくるための手伝いをしたいと考えている。

今後の活動としては、災害が起こる前から、住民のつながりを作っておけること、災害時に支援してくれる企業や医療機関との連携も含めたつながりづくり。これまで物資と被災者へのマッチングを行なってきた経験から、地域ごとに共感してくれ活動してくれるメンバーがいることが重要。また、非常時だけでもサポーターになってくれる「災害時サポーター」を日頃から募ることも計画している。いざという時に、迅速に動ける人が多く控えていることで、自分たちが被災した時も、慌てない対応が可能になり、近隣で災害が発生した時には、駆け付けて応援ができる。

平成30年7月豪雨のボランティアをすることから始まった団体が、今後の災害時に対応できる団体づくりと発展している。ママとして、自分もいざという時、いつでも動ける体制にしておきたいと思うとともに、今回の経験をもとに、よりスマートに動けるよう、彼女たちの活動を見守り、応援していきたいと思う。

 

いまできること取材班
文章:榎本尚子
写真:サン・サポート岡山 提供
編集:松原龍之

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