【フルサイズ550g以下!】軽量スリーピングマットの寝心地ってどうなの?【PART2】 テント泊登山を心地よい時間にできるか否かのカギは、スリーピングマットにあり! この10年間でもっとも進化した登山道具といえるスリーピングマット。軽さ、寝心地、耐久性、そのバランスを高次元で求めた3シーズン用スリーピングマットの中で、全長175㎝以上のフルサイズモデルで、重量は550g以下の10のマットを厳選。それぞれの寝心地をレビューしてみました! 今回はその後半。インフレータブルマットとエアーマットを細かく解説します。

いよいよ気になるインフレータブルと

エアーマットのレビューです!

登山に使うスリーピングマットの解説と軽さに秀でたクローズドセルのマットのレビューを行なった前回に続き、今回は収納性、軽さ、寝心地のよさで誰もがきになるインフレータブル、エアーマットの詳細レビューです。それでは、どうぞ!!
▼パート1はこちら!

【フルサイズで550g以下!】軽量スリーピングマットの寝心地ってどうなの?【PART1】
テント泊登山を心地よい時間にできるか否かのカギは、スリーピングマットにあり! この10年間でもっとも進化した登山道具といえるスリーピン...

寝心地とコスパ抜群なのは

このインフレータブルです

シートゥサミット/ウルトラライトS.I.マット ¥8,900

このインフレータブルマットよりも軽いマットは、いくつかのブランドに存在します。しかし軽さよりも寝心地を重視したいなら、コシのあるクッション性で、ラクに寝られるこのマットが一歩リードしていることを報告しておきます。

寝心地と膨らましやすさを可能にしているのが、インフレータブルマットでは珍しい大口径のバルブです。口径が大きいので呼気を多く注入でき素早く膨らませ、逆止弁を備え、ワンプッシュで固さを自分好みに微調整できるのです。

また軽量化のために内部のフォーム材の肉抜きがされていますが、冷えを感じやすい肩や腰部分の肉抜き加減を他の場所と変えているそうで、確かに心地よいのです。そしてこれだけの機能性を備えて¥9,000を切った価格は、コスパと機能にすぐれたモンベルのマットを下回り、大きな魅力です。

やっぱり定番はハンパない

マットの王者の底力を感じます

サーマレスト/プロライト レギュラー ¥12,000

『サーマレスト』は1972年に世界で初めてインフレータブルマットを開発。アウトドアや旅での眠りに快適さをもたらした発明は、現在でも進化しながらさらなる快適さを提供してくれています。そのひとつが、この『プロライト』。

厚さは他ブランドのマットと同様の2.5㎝ながら、それ以上の厚さを感じる安心感、ハリのある寝心地です。筆者は自宅でもこのマットで寝ていたことが10年程ありましたが、他ブランドにはない、眠りの安心感こそがこのマットの特長だと感じています。

長さはカタログ表記では183㎝なのですが、軽量化のために足元がかなりシェイプされている影響なのか、身長174㎝の筆者の身体でギリギリ収まるくらい。もっと体格の大きな方は、ワンサイズ上のラージを選ぶ必要があると思います。バルブは同社が長く採用している小型回転仕様。大きく呼気を7回くらい吹き込めば完全に膨らみます。
インフレータブルマットの元祖であり定番、日本的な表現をすれば「老舗」の寝心地は、体験する価値のあるものです!

コスパ重視なら、エアーマットも

やっぱりモンベルなんです!

モンベル/U.L. コンフォートシステム エアパッド 180 ¥9,500

エアーマットで¥10,000以下というコスパのよさ、そして収納サイズのコンパクトさを装備できるなら、新たなスリーピングマットとして考えてみようかな・・・と思わせるのはモンベルの真骨頂といえます。しかもフルサイズで504gの軽さ。十分なスペックではないでしょうか?

厚さは7㎝あり、柔らかめではありますが、横向きで寝ても底突きのない寝心地は申し分ありません。

しかし、気になる点も・・・横方向に配されたボックス構造は、ボックス同士を繋ぐ隔壁を備えていますが、ひとつひとつのボックス内部に隔壁がないため、寝返りを打つと音が響きます。そうした構造のため保温性もやや劣り、氷点下になるような山での使用はキビしいと感じました。とはいえ、多くのハイカーは夏休み前後のテント泊登山になると思うので、その時期であれば装備してみる価値は大きいでしょう。

U.L. コンフォートシステム エアパッド 180の購入は

エアーマットは寒い・・・?

いえいえニーモは高所にも対応してます

ニーモ・イクイップメント/テンサーアルパイン レギュラー マミー ¥22,000

カタログ表記にある「参考使用温度 −29〜−23℃」。寝袋だと対応温度域の表記がありますが、スリーピングマットでは、あまり見ることがありません。しかもフツーのテント泊ハイカーが経験することはないだろう極低温に対応しながら、475gと軽量。恐らくライバル商品になるだろうサーマレスト/ネオエアーXサーモが430g、¥28,000。悩む所です。

ただこのマットには標準でVORTEXポンプサックが装備されます。このポンプサックはコツをつかむと3回位で膨らますことができ、マットはそのポンプサック2回分で膨らみます。呼気を直接吹き込むことで起きるマット内部の結露防止、さらには保温力の低下を防ぐ有用な装備です。

またバルブはワンプッシュで好みの固さ調節ができます。これらの機能を採用するマットはまだまだ少数。4シーズン&高所でのテント泊をするハイカーなら、悩む必要なく、コレを選べば問題なし! です。

枕があったらいいのに・・・

そう思ったことがある人はコレです

クライミット/イナーシャ・オゾン ¥14,500

5年程前に日本市場にも登場以来、多くのハイカーからよい評判しか聞かないエアーマットがコレです。大胆に肉抜きされた本体は、しかしそれでいて全身をしっかり受け止めてくれ、フカフカとまではいかないものの、十分な寝床を提供してくれます。
またこのマットは寝袋の内側に収納して使用することが推奨されていて、そうすることで肉抜きされた部分に寝袋が潰されずに入り、保温性を維持するというものです。

ですがこのマット、実は筆者も使っているのですが、気温5度くらいで寝袋内そして外側で普通のマット同様に寝袋の下に敷いて使用した際に、どちらも尻部分の肉抜き穴から冷えが入り続けて眠れないことがありました。結局、歩行時の休憩用に使っているソフトシート(野外用座布団)を尻部分に敷いて冷えを防ぐことができましたが、以来ソフトシート併用です。

ソフトシート併用でも使い続ける理由は、本体とは別バルブでエアーを調節できるマクラがとても寝心地がよいから。尻冷えを防げれば、快眠が得られるマットであることは評判通りです。

イナーシャ・オゾンの購入は

シートゥサミット、脱帽です!

今回のベストの寝心地はコレ

シートゥサミット/イーサーライトXTマット ¥17,700

登山用のスリーピングマットで、まるでベッドに寝転んだような気分になったのは、このマットが初めてです。10㎝もある厚さは、クッション性にも富み、しかし柔らかすぎることはなく、浮遊感を感じる程。この上では野外にいることを忘れてしまうかもしれません。また底突きすることももちろんなく、「横向きに寝ても快適だ」とメーカーはその自信をカタログに表記しています。

秀逸なのが収納袋。マットを入れるのとは反対側の口にポンプサックが装備されていて、収納袋から呼気を吹き込み、ポンプサックを膨らませてマットに空気を注入することができます。分厚いので注入しなければならない空気量が多いのが難点ですが・・・。

また今回はまったくわかりませんでしたが、スペックを見るとR値が0.8なので、保温力は低いです。もし4シーズン使用するなら、このマットの保温バージョンの『イーサーライトXT インサレーティッドマット』を選ぶとよいでしょう。どちらも極上の寝心地でハイカーを包んでくれるでしょう! 快適な夜を過ごしたいなら、コレです!!

柔らかめの寝心地で272gと超軽量

見た目もちょっと違います!

ビッグアグネス/AXLエアーレギュラーマミー ¥19,800

表生地が薄く、これがフルサイズで272gという軽さを生んでいる理由なのだろうと思いつつ、パンクの心配も少しあるなぁ・・・と思ったら、この生地はビッグアグネス独自素材の引き裂き強度に強いランダムリップストップナイロンだと知り、不安軽減。多少、寝返りの際に音が気になりますが、うるさいという程ではありません。

採用されているバルブは逆止弁付きで吹き込んだ呼気を漏らしませんが、ポンプサック等は装備されていないので、呼気を25回位吹き込む必要がりあります。しかしキャップをバルブに挿入すれば空気は一気に抜け、エアーマットの収納に付きものの煩わしさについてはかなりラク。

厚さは8~9.5㎝、問題のない寝心地です。価格、寝心地、そして軽さのバランスは非常に高く、エアーマットを探しているのなら間違いなく候補に入れて検討してみてください。

AXLエアー レギュラー マミーの詳細は

今回最軽量エアーマットは、

収納サイズも超コンパクト

サーマレスト/ネオエアーウーバーライト レギュラー ¥25,000

スリーピングマット選びでいつも感じていたのは、「もっとコンパクトなものはないのだろうか?」ということ。軽さばかりが注目されているけれど、「いや、それデカいし・・・」というものばかり。

筆者が先に紹介したクライミット/イナーシャ・オゾンを手に入れた最大の理由は、収納サイズがコンパクトだったから。そしてこのネオエアーウーバーライトを手にして思ったのは、肉抜きもしないで、よくこんなに収納サイズをコンパクトにできたな!という驚きです。

コンパクトさを生み出したのは、明らかに薄い生地です。15Dナイロンなので、パンクの心配は尽きません。でもそこは収納サイズを重視して、諦めます。薄い生地ですが、粘りとハリのあるクッション性は、変な沈み込みがなく、さすがサーマレスト! と思えるものです。
重さだって、今回紹介しているエアーマットで最も軽く、全10モデルの中でも山と道/UL Pad 15の131gに次ぐ2番目。3シーズン用で¥25,000という価格は、ちょっと勇気が必要ですが、テント泊を変えるのは確実です。

軽さだけではなく、収納サイズや寝心地も重視してみて

登山の道具は軽い方がラク、軽い方が移動距離が長くできる。それは間違いのない事実ですが、スリーピングマットに限っては、軽さにプラスして快適さ、寝心地のよさを重視した方がよいと、今回10のマットに寝転んでみて改めて思いました。しっかり眠れること、それは登山という非日常において、冒険ではなくレジャーとしての登山において、とても重要です。

そのためにも、スリーピングマットを購入する際には是非、ショップで「試し寝」させてもらうことをオススメします。そして山でよい夜を過ごせますように!

それでは皆さん、よい山旅を~!

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