身を粉にして投げ続ける“縁の下の力持ち” パ球団のロングリリーフたち

日本ハムのブライアン・ロドリゲス【写真:荒川祐史】

日ハムのロドリゲスや楽天辛島は先発から配置転換で活躍

 僅差でリードしている試合においてバトンをつないでいくセットアッパー、そして試合の最後を締めくくるクローザーといった投手たちは、リリーフにおけるいわば花形といえる存在だ。しかし、当然ながら彼らだけでは投手陣は成り立たない。6回以前や同点の場面で力投する中継ぎ投手や、大差がついた試合でイニングを消化する投手たちの存在も、長いシーズンを戦っていく上では決して欠かすことのできないものだ。

 そこで、今回は試合途中から長いイニングを投げ、他の投手たちの負担を減らしてくれるロングリリーフを担当してきた投手たちを、各球団から1人ずつピックアップ。今季の成績を紹介するとともに、彼らの活躍ぶりについても触れていきたい。

◯ブライアン・ロドリゲス投手(日本ハム)
今季成績:29試合6勝4敗8ホールド1セーブ 70回 41奪三振 防御率2.96

 昨季、来日1年目にして開幕投手に抜擢されたロドリゲスは、今季も開幕直後に先発として4試合に登板。4月24日には5回3失点で今季初白星を挙げたが、5月からは中継ぎに配置転換される。新たな役割を任された助っ人右腕は剛速球を武器に躍動し、5月の月間防御率1.35、6月の月間防御率2.93とリリーフ適性の高さを示した。6月にはホールドがつく重要な局面での登板も増え、6月14日の巨人戦では来日初セーブも記録している。

 この時期には1イニング限定の登板が大半となっていたが、7月からはショートスターターの後を受ける「第二先発」としての登板が増加していく。元々先発を任されていたこともあり、ロドリゲスはすんなりと適応。7月には3勝を挙げ、防御率も2.25。8月には中継ぎながら2試合連続で5回を投げた。8月20日には約4か月ぶりに先発のマウンドに立ち、5回2失点(自責点1)と好投。様々な役割を柔軟にこなしてくれる剛腕は、まさに文字通りの頼れる「助っ人」だ。

◯辛島航投手(楽天)
今季成績:22試合7勝5敗1ホールド 95回 70奪三振 防御率4.45

 リリーフ陣の層が厚く、基本的に1人の投手が1イニングを受け持つことが多い楽天にあって、現在は辛島がロングリリーフの役割を任されている。今季は開幕から先発ローテーションの一角に加わり、7月までに6勝をマーク。しかし、4月が防御率3.13、5月が防御率4.34、6月が防御率4.60、7月が防御率7.04と徐々に調子を落としていき、8月からは中継ぎに配置転換。以降は7試合で12回を投げ、防御率3.75と一定の投球を見せている。

 クローザーとして完全復活した松井裕樹投手、急性虫垂炎の手術から復帰した左キラーの高梨雄平投手と、楽天のブルペンには実績十分の左腕が2人揃っている。しかし、ここから辛島が中継ぎとして汎用性の高さを示すことができれば、リリーフ陣の運用の幅もさらに広がってくるはず。あと3勝に迫った自身初の2桁勝利に近付くためにも、今後もどちらに転ぶかわからない試合を引き締める役割を遂行していきたいところだ。

西武佐野は6月の月間防御率0.90

◯佐野泰雄投手(西武)
今季成績:34試合1勝2敗1ホールド 58回 35奪三振 防御率4.19

 佐野は2015年の入団以降、4年間で通算28試合の登板にとどまっていた。だが、今季は4月からリリーフとして1軍に定着し、主に先発投手が序盤に崩れた試合を引き締める役目を担っている。決してスポットライトの当たる役割とは言えないながらも、時には1試合で3イニングを投げるなど多くのイニングを消化。調子を崩す投手が多かったリリーフ陣にあって、安定した投球を披露してコンスタントに登板を重ねていく。

 とりわけ6月は月間防御率0.90と絶好調で、6月11日の巨人戦では発熱で登板を回避した今井達也投手に代わって急きょ先発のマウンドに上がり、4回を無失点に抑える好投でチームの勝利に貢献。交流戦期間中の防御率は1.13と、セ・リーグ相手に相性の良さを示した。今季だけで過去4年の合計を上回る34試合に登板しているタフネス左腕は、これからどこまで登板数と成績を伸ばしていってくれるだろうか。

◯チェン・グァンユウ投手(千葉ロッテ)
今季成績:34試合1勝1敗4ホールド 47回2/3 38奪三振 防御率3.59

 2017年までは先発としての起用も少なくなかったチェンだが、2018年からはリリーフとしての登板が大半に。今季は中継ぎに専念して主にロングリリーフの役割を担い、開幕から9試合連続で自責点0の快投を披露。これまでは外国人枠の兼ね合いもあって1軍での出場機会が限られることも多かったが、今季は4月2日に1軍合流を果たしてから、8月を迎えるまで登録抹消されることなくフル回転。外国人枠を巡る争いに、見事勝ち抜いてみせた。

 先述の佐野とは異なり、交流戦では防御率6.75と打ち込まれたが、パ・リーグの球団相手には防御率2.82と安定した投球を披露。登板数は現時点で既にキャリアハイの数字であり、8月4日まで防御率2点台以下を維持するなど安定感も水準以上だ。しかし、疲労もあってか8月に入ってから調子を落とし、8月14日に1軍登録を抹消されている。台湾出身の万能左腕は、ここから調子を取り戻して1軍の舞台に舞い戻り、奮闘を続けてきたシーズンを名実ともに過去最高の1年とできるか。

ソフトバンクの高橋純は4年目で完全覚醒か

◯山崎福也投手(オリックス)
今季成績:31試合2勝3敗1ホールド 47回2/3 34奪三振 防御率4.34

 2014年にドラフト1位という高い評価を受けてプロ入りしたが、過去4年間は1軍定着を果たせていなかった。しかし、今季は開幕から7試合連続で無失点と好投を見せ、その高いポテンシャルの開花を感じさせる上々の出だしを見せる。その後も4月末に2軍での再調整こそ経験したが、ここまでロングリリーフとして奮闘。調子の波こそ激しいものの、開幕から登板を重ねて多くのイニングを消化してきた。

 今季のオリックスは澤田圭佑投手のケガや増井浩俊投手の不振もあって、なかなかリリーフ陣の顔ぶれが定まりきらなかった。そんな中で、山崎福の登板数は現在チーム内で5番目の多さとなっている。8月11日に再び1軍登録を抹消されたが、7月以降に2度の先発登板を経験するなど活躍の場を広げている26歳の左腕。終盤戦も与えられた役割を着実にこなしていき、首脳陣からのより大きな信頼を勝ち取りたいところだ。

◯高橋純平投手(ソフトバンク)
今季成績:33試合3勝1敗12ホールド 39回1/3 50奪三振 防御率2.29

 2015年のドラフト1位で入団した高橋純は、ケガの影響もあって2018年までの3年間で1軍登板が1試合のみにとどまっていた。4年目を迎えた今季は若き右腕にとって勝負の1年でもあったが、5月に1軍へ合流してからは安定したピッチングを披露。時には2イニング以上を投げる試合もありながら、防御率は常に1点台以下を推移する抜群の安定感で、故障者が続出した投手陣にとって救世主ともいえる活躍を見せている。

 38回2/3で49奪三振を記録している、高い奪三振能力も高橋純投手の持ち味の一つ。7月中旬からは勝ちパターンでの登板も増えてきたが、その後も活躍の場は1イニングのみにとどまらず、7月20日の楽天戦では2回2/3を、8月6日のロッテ戦では1回2/3を投げ抜き、それぞれホールドを記録。高校時代から高い評価を受けてきた逸材は相次ぐ苦難を乗り越え、いよいよ完全覚醒と呼べる飛躍の一年を過ごしつつある。

 今回取り上げた6投手には、実質的に今季が1軍でのデビューシーズンに近い立場の高橋純を除けば、いずれも先発として起用されていた時期があるという共通点がある。7月まで先発として登板を重ねていた辛島はやや趣が異なるが、ロドリゲス、佐野、山崎福は実際に今季も先発のマウンドを踏んでおり、長いイニングを投げたことがある経験は、ロングリリーフに対応するにあたって重要となってくるのかもしれない。

 もちろん、複数のイニングを任される投手にかかる負担は、短いイニングを投げる中継ぎ投手よりも大きくなりやすい。実際、開幕直後から投げ続けていた佐野、チェンは8月に入ってから調子を落としており、山崎福は2度目の2軍落ちを経験している。そんな中でも好投を続けているロドリゲスと高橋純のタフネスぶりはひときわ光るが、各投手にとっては猛暑が続くここからの時期が踏ん張りどころになってきそうだ。

 チームのために連日のように身を粉にして投げ続ける、ロングリリーフというポジション。先発ともセットアッパーとも異なる立場ながら、チームに対する貢献度は十二分に大きい存在である彼らの投球にも、今一度注目してみてはいかがだろうか。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)

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