「韓国は周辺国の打撃目標になる」予言していた北朝鮮

韓国が日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の破棄を宣言した。驚愕すべき事態と言える。韓国でも、安全保障や外交の専門家の多くは驚きのあまりひっくり返っていると聞く。

米国の専門家たちはかねてから、韓国がGSOMIAを破棄したら日米韓の協調体制に甚大な悪影響を及ぼすと警告してきた。より正確に言うならば、破棄により打撃を受けるのは日本よりも米国の国益であり、米韓関係だろう。

文氏を罵倒する理由

一方、韓国はいずれ孤立し、「周辺国の打撃目標になる」と予言した国がある。ほかならぬ北朝鮮だ。

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は14日付の論評で、米国が地上発射型の中距離ミサイルを韓国に配備すれば、「地域の情勢を激化させ、極東地域で新たな冷戦と軍備競争を引き起こす」と主張。そうなれば韓国は「米国の対朝鮮・対アジア侵略の核攻撃前哨基地に転落し、米国の軍事的制覇を絶対に許さないという周辺諸国の直接的な打撃の標的になるしかない」と強調した。

ちなみに、ここで言われている「周辺諸国」とは中国とロシアのことだ。実際、中国外務省は6日、韓国など米国の同盟国に対し、「米国の中距離ミサイルを中国のドアの前に配備すれば、中国は座視しないで対抗(反撃)措置を取る」と警告している。

一方、エスパー米国防長官は今月、地上配備型の中距離ミサイルを比較的早期にアジアに配備することに前向きな姿勢を示したが、韓国国防省は、米国の中距離ミサイルを国内に配備する協議は行っておらず、配備を検討する計画もないと説明している。

しかし、GSOMIAの破棄で米国に「借り」を作り、今後も安全保障面での米国依存が高まらざるを得ない韓国が、果たして「中距離ミサイルを配備させろ」との要求を突っぱねることができるのだろうか。

仮に、日米韓の3国協調が良好であれば、韓国は「対北朝鮮に専念する」とでも言い訳して、中距離ミサイルの件は米国と(韓国と比べると中国との対決に前のめりな)安倍政権とで相談してもらう、ということも考えられたかもしれない。

だが、日韓関係がこのような事態に至った以上、こんなことは想像することすらできなくなった。

北朝鮮はもしかしたら、こうした事態の展開を早くから予想していたのかもしれない。

金正恩党委員長は文在寅大統領と繰り返し会談していながら、最近の北朝鮮メディアは文在寅氏を罵倒するようになっている。もしかしたら金正恩氏は、一筋縄ではいかない文在寅氏のキャラクターを、いち早く見抜いていたのかもしれない。


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