夏休み明けは、子どもの自殺が最も多い。どうしたら命を救うことができるのか。わが子を自殺で失った遺族らでつくる一般社団法人「ここから未来」は今月中旬、川崎市内でシンポジウムを開催。自身の体験になぞらえ、異変は必ず身体や言動に表れるとし「子どものサインを見落とさないで」と警鐘を鳴らす。
内閣府によると、1972~2013年の42年間に自殺した子どもの総数は1万8048人。18歳以下の自殺人数を日付別に分析したところ、9月1日が131人で最も多かった。
自殺の理由はさまざまだが、一つの要因にはいじめの問題がある。同法人理事で教育評論家の武田さち子さんは語る。
「なぜ、この時期に子どもの自殺が最も多いのか。一つは、子どもたちの環境の変化がある。会員制交流サイト(SNS)の普及により夏休みもネット上で悪口をばらまかれたり、SNSで攻撃されたりと、いじめが追い掛けてくる。一方、夏休みは子どもたち自身、考える時間が持てる機会でもある。人生に絶望感を抱く子どもはネット検索などで死ぬ方法について具体的に調べたり、計画したりする」
東京都足立区の男子生徒が自殺したケースでは、亡くなったのは10月下旬だったが、夏休み期間中に準備していたことが調査で判明したという。
同法人理事の篠原真紀さんも「子どもは必ずサインを発している」と自らの体験を重ねる。次男の真矢(まさや)さんは川崎市立中学3年だった10年6月、修学旅行明けに自宅で命を絶った。後に、遺書やそれまでの言動、部屋に残されたメモから、真矢さんが長い時間をかけて準備し、強い意志を伴っていたことが分かった。
「あの時の言葉、態度、様子が点と点が線につながり『親として気付いてあげられなくてごめんね』と胸に刺さるものがあった。子どもの変化や様子の変わりようをいつも見なくてはいけない」
サインとは何か。武田さんは「言葉にできないことは体が語る」と強調する。「いじめや心配事を否定する言葉よりも、顔色は悪くないか、食欲はあるか、夜は眠れているかをチェックしてほしい。体調不良は生命維持に危険を感じた肉体からの警笛かもしれない」
自分を守るための回避行動も共通して見られるサインという。具体的には学校や部活に行きたがらない、親に黙ってサボる、宿泊行事に参加したがらない、などが挙げられる。
「なぜ行きたくないかを話すには自分がいじめられていることを明かさないといけない。理由を言えないときは、より深刻な状態にあると思ってほしい」
では、いじめが分かったら、何ができるのか。
武田さんは言う。
「客観的な情報を集めて学校に相談すること。そして『あなたのことが大事、一緒に考えたい』と伝えてほしい。その一押しが、子どもの命を救うかもしれない」
【家庭で見られるいじめのサイン】
(1)身体的変化
腹痛、頭痛など不調を訴える。発熱、下痢が続く。食欲がなくなる、増す。不眠など。
(2)服装の変化
においや清潔さを非常に気にする。服を破いてきたり、汚してきたりする。外出時にフードをかぶる。目立つ服装を嫌がる。
(3)持ち物
持ち物がなくなる、壊される。弁当を残す。今までなかったのに弁当箱を洗って帰る。
(4)言動の変化
言葉遣いが荒くなる。無口になる。部活や友だちの話をしなくなる。部屋から出ない。
(5)感情や表情の変化
元気がない。感情の起伏が激しくなる。きょうだいげんかで手加減しない。甘えてくる。
(6)携帯電話やネットの注意点
携帯でよく呼び出される。携帯メールやラインが頻繁に届き、届いても見たがらない