「免許返納」前向きに 横須賀の女性が“記念パーティー”

9月の「運転免許返納記念パーティー」に向け、歌を練習する奥泉さん

 横須賀市に住む奥泉信子さん(86)が6月、運転免許証を横須賀署に自主返納した。高齢ドライバーによる交通事故が後を絶たない中、「人ごとではない」と考え、54年間所持していた免許証を手放した。新たな一歩と捉え、9月には仲間とともに記念のパーティーも開く。奥泉さんは「事故を起こさず、何事もなく返納できたのは一つの誇り」と胸を張り、パーティーを心待ちにしている。

 奥泉さんが免許を取得したのは32歳の時。病弱だった長男を病院に送り迎えするためだった。通勤や買い物のほか、車とフェリーで生まれ故郷の鹿児島に帰省する際にもハンドルを握った。

 年を重ね、高齢ドライバーによる交通事故をニュースで目にするたび、自主返納が頭をよぎるように。決定打になったのは、今年5月に大津市の交差点で車同士が衝突し、保育園児ら16人が死傷した事故だった。事故を起こしたのは高齢者ではなかったが、「たとえ自分で気を付けていても、もらい事故もあり得る」と思うようになった。

 今年は早世した長男が亡くなって、ちょうど50年。「子どものために取った免許。いい節目だと思った」。長男の命日の6月21日、免許を返した。愛車も廃車にした。

 「運転免許返納記念パーティー」は当初、冗談のつもりだった。食事を共にしていた友人に「パーティーでも開こうかしら」と話すと、周囲が面白がって協力した。奥泉さんが長年、合唱に親しんできたことから、コンサート形式にし、独唱や仲間とのコーラスを披露。運転の思い出も話す予定だ。奥泉さんは「協力してくれた仲間に感謝し、楽しい思い出にしたい」と話している。

 パーティーは9月1日午後2時から、スタジオ愛音(横須賀市公郷町5丁目)で開催。軽食付きで参加費は2千円。問い合わせは、ムジカソアヴェ(長嶋さん、平日午後3時から8時)電話046(876)5106。

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