<大ヒット盤> 田原俊彦『好きになってしまいそうだよ』 感謝と決意を綴ったスロー・バラードは必聴もの

田原俊彦『好きになってしまいそうだよ』

 歌手デビュー40周年イヤーのシングル第1弾。この翌月に発売された4枚組DVD『PHOENIX VISION』は80年代の歌番組からの映像を多数収録し、2万円以上の高額商品ながら千セットを超えるヒットとなったが、このシングルでは新曲も楽しませる現役歌手だと知らされる。

 表題曲は、80年代後半から90年代、ダンディーな田原の世界を支えた松井五郎作詞のミディアム・ポップス。片想いに苦しみながらも救いがあると感じるのは、都志見隆による爽快なメロディーと、58歳とは思えぬ田原の愛らしい歌声の効果も大きいだろう。

 カップリングの『Kissしちゃおう』は、同じ松井五郎×都志見隆コンビで、こちらはデビュー当時を想起させるほど素のイメージ通りの明るいナンバー。DVD収録の『好きになって~』のMusic Videoはモノトーン調でシリアスに展開する一方、インタビューではジョーク交じりで常に前向きな思考が繰り広げられる。つまり、CD、DVDともにいつも以上に多彩な魅力を堪能できる仕掛けとなっている。

 通常盤のみ収録の『ラストソングは歌わない』も必聴もの。作詞:三浦鯉登、作曲:綱倉一也で、ファンへの感謝と歌い続ける決意を綴ったスロー・バラード。編曲の大野裕一が、これら3曲の特長をより際立たせたことも大きい。

 田原俊彦の作品を通して、笑顔と前向きな発言が、きっといつの日かその人に幸せを呼び起こすものだと強く感じるはず。

(ユニバーサル・CD+DVD初回限定盤2130円+税)=臼井孝

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