脱プラごみ企業の挑戦(上)イオン 地域巻き込んで変革

持参したマイバッグに商品を入れる買い物客=イオンスタイル東神奈川

 お盆を迎えた今月13日。総合スーパー「イオンスタイル東神奈川」(横浜市神奈川区)の店内は家族連れでにぎわい、レジ近くでは買い物客が持参した「マイバッグ」に支払いを終えた商品を詰め込んでいた。

 イオングループが「買い物袋持参運動」の展開を始めてからもうすぐ30年。客がレジ袋を辞退し、持参したバッグを使う光景はいまや珍しくなくなった。

 同グループ内で昨年度までにレジ袋の無料配布をやめた店舗は約1700店にまで広がった。レジ袋の辞退率も8割を超え、小売業平均の53.5%(日本チェーンストア協会調査)を大きく上回る。イオン(千葉市美浜区)環境・社会貢献部の中ノ理子さんは「お客さまと一緒に取り組んできたからこそ、いまの実績につながっている」と語る。

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 運動の始まりは1991年にまでさかのぼる。同社は「レジ袋の使用量を減らすことで、地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出を抑えるとともに、ごみの削減、原料の石油の節約を目指す」として、スタートさせた。

 当時、イオンが店舗で無料配布していたレジ袋は、石油由来のポリエチレンを主原料としたもの。プラスチックフィルムの製造業者でつくる「日本ポリオレフィンフィルム工業組合」の調査では、国民のレジ袋使用料は年間305億枚、必要な石油はドラム缶(200リットル)279万本にも上るという試算結果があった。

 「『企業全体で地球環境の問題に取り組んでいく』というトップの強い理念があった」と中ノさん。イオンは2007年に全国チェーンとして初めてレジ袋の無料配布中止の実証実験を開始し、13年には全国に拡大させた。

 だが、当初は消費者の理解は進まなかった。07年は42店舗で無料配布を中止したが、レジ袋の辞退率は22.9%にとどまった。「なぜレジ袋をもらえないのか」「もう店には来ない」という声も多く寄せられたという。

 それでも、取り組みを続けていくと変化が生まれた。店頭告知やマイバッグ推進のキャンペーンを通して取り組みの意図を伝えることで、賛同する消費者が徐々に増えていった。

 さらに、自治体や市民団体、地元の商業店などと、レジ袋削減に向けた取り組みに関する「協定」を締結。地域全体で環境保全活動に取り組む必要性が共有されていったという。

 イオン広報グループの安田久美子さんは「持続可能なビジネスというのは、お客さまはもちろん、地域社会なくしては成り立たない。社員のみならず、お客さま一人一人、地域の皆さんの意識が変わったことで、社会もまた変化した」と語る。

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 小売業トップクラスの販売網と店舗数を誇るイオングループの影響力は非常に大きい。18年度のレジ袋削減枚数は約26億4700万枚にも上る。19年度はレジ袋無料配布中止店舗を約2500店(前年度比47%増)まで広げる予定だ。

 取り組みが拡大する一方で、プラスチックごみ問題もまた深刻度が増している。国連などによると、プラごみは世界で年間3億トンに上るとされる。

 中ノさんは言う。「温暖化が進み、海洋汚染が進み、資源は乏しくなると、あらゆるものがいまの単価では販売できなくなるのではないでしょうか。そうなると、小売業は成り立ちません。プラごみの問題に向き合わなければ、小売業自体のビジネスが危ぶまれるという危機感が私たちにはあります。その危機感こそが、私たちの活動を続ける大きな力になっています」

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 プラスチックごみの流出による海洋汚染が世界的な問題となっている。深刻化するプラごみ問題に取り組む企業の挑戦を追った。

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