【U-18W杯】侍Jは米国にどう戦う? パワフル打撃&鉄壁守備の世界王者を独自分析

侍ジャパンU-18代表は1日に強敵アメリカ戦に挑む【写真:荒川祐史】

打撃はコンパクトも打球は強い 選球眼◎ 足も速い 投手陣は150キロ台連発

 韓国・機張(きじゃん)で開催中の「第29回 WBSC U-18ベースボールワールドカップ」(全試合テレビ朝日系列・BS朝日・AbemaTVで放送)。侍ジャパン高校日本代表は1日に大会5連覇を狙う米国代表と対戦する。米国代表も南アフリカ、台湾を下して、2連勝中と好調。今年は一体どんなチームなのか。

 31日の台湾戦。スタメン9人中、6人が左打者だった。米国はメジャーのスカウトも注目する俊足好打の左打者・クローアームストロングを1番。30日の南アフリカ戦で1番で3安打した同じ左打者のハッセルは台湾戦では2番だった。この2人は脅威だ。2選手ともバットに当てる技術が高く、凡打になった打球でもほとんど芯で捉えたもの。打球も非常に強い。中堅から左方向へしっかりはじき返す印象だ。

 クローアームストロングは足も速いため、塁に出すとかき回される。守備範囲も広い。2点差に迫られた6回1死二塁。台湾4番の中堅への本塁打性の当たりをジャンプしてキャッチ。同点を阻止した。流れが行きかけていたところを完全に遮断したプレーだった。

 3番のブコビッチ、5番のロモは強打の右打者だが、大きいのは狙わずコンパクトにスイング。選球眼も良く、四球をきっちりと選んでいた。試合は6回まで3-1と、どう転ぶかわからない展開だったが、7回、8回に点差が開いていったのは四死球が多く絡んで、打線が繋がったから。得点したイニングはすべて先頭打者がヒットや四球で出塁をしていた。塁に出れば、盗塁を仕掛けたり、チームバッティングで繋いだり、各選手が役割を把握し、試合の流れを作る力がある。

 4番のソダーストロムは当たりが止まっていたため、ここで打線は一度、切れる印象だった。左打者の主砲に対して、台湾の左腕たちが低めの外に逃げる変化球でうまく料理。一ゴロや二飛に仕留めていた。各打者とも真っすぐには強いが、しっかりと制球された低めの変化球や打者の方に向かって来て、ストライクゾーンに入ってくる大きな変化のボールには対応しにくそうに見えた。

 下位打線も上位打線と同じ、コンタクトヒッターが揃う。4回には「9番・遊撃」で出場していた元西武のホセ・トレンティーノを父に持つ、ミラン・トレンティーノが中前適時打を放つなど、活躍。「6番・右翼」のヘンドリック、「7番・三塁」のハルター、「8番・二塁」のハースは打撃以外にも好守が光った。ポジショニングもうまかった。米国チームは2試合で失策は1つもない。

台湾戦先発のラジシックは155キロ 上を行く高校NO.1アベルはもっとすごい?

 先発したラジシックは最速155キロのストレートを計測し、6回途中1失点と好投した。他にも150キロ台の投手が揃う。この2試合で先発をしていないミック・アベル投手は米国内の高校NO.1の呼び声が高い。ジャック・レゲット監督は「まだ日本戦の投手は決めていないよ」と話すにとどめたが、先発してくる可能性はある。指揮官が「非常に闘争心がある選手でコントロールもかなり優れている好投手」と絶賛する右腕。150キロ後半の速球は大きく動く。スライダーやカーブ、チェンジアップと多彩な変化球には日本打線もなかなか攻略はできないだろう。

 また、台湾戦の4回には2度、台湾ベンチから監督が出て、抗議をする場面もあった。1つは盗塁を仕掛けた際、空振りした打者が二塁送球をしようとする捕手の前に出た。しかし、守備妨害は取られなかった。バットを振ったように見えたが、「止めた」として、ボールになった。何が起こるかわからないのが国際大会。不可解な判定でも切り替えること、冷静さを保つことも重要だ。ここでアメリカベンチが冷静だったのは、三塁コーチャーだったレゲット監督は相手監督が抗議中に、ネクストバッターにいるトレンティーノに指示を出していた。その後、貴重なタイムリーが生まれている。

 簡潔に言ってしまえば、今年のU-18アメリカチームは当然、強い。ただ、日本にも勝機はある。この日、6回まで2点差で行けたのは抑えた2人の左腕投手の低めの変化球の制球が良かったから。そこへのコントロールの徹底と、先頭打者や無駄な四球を出さないことは日本も必至だ。分かっていてもやってしまうのが野球だが、走者を出しても、米国はこの日牽制死もあった。スキはあるかもしれない。

 レゲット監督は日本のスペイン戦を偵察していた。いよいよぶつかる対戦を前に「日本はよく鍛えられているチームだ。基本がしっかりしている。守備も堅いチームだ。彼らは強敵だと私は思っている」と警戒心を強めている。5連覇を目指す米国にも慢心はない。いよいよ迎える最初の山場は、堅実な野球対決となりそうだ。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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