中城湾に歴史の魅力 當眞氏講演 貝塚、グスク時代語る

 【南城】三山を統一して琉球王朝初代王となった尚巴志像建立が進められる中、南城市文化協会(與那嶺紘也会長)は5日、尚巴志と絡め「中城湾から見たグスク」と題して講演会を開催した。

 講師は西原町出身で県文化財保存審議会長の當眞嗣一さん。中城湾に面した伊保の浜が去る戦争で飛行場に拡張され、消された村が生まれ故郷と話を進めた。専門の考古学の観点から「東り四間切り」と呼ばれる南城市には貝塚やグスクが多く、魅力に富んだ所と説明した。

 中城湾はかつて東海岸を通る貿易船の重要な位置を占め、湾をめぐって歴史が大きく展開。14世紀ごろになると、湾入り口辺りに勝連や中城グスクによる勢力が台頭して状況が変化し、佐敷や島添大里グスクを拠点とする勢力が浦添・西側へと動いていったと指摘した。

 「古い時代の航海には東海岸の方が便利であった」と説いた、民俗学者の柳田國男著の「海上の道」に触れ、西海岸の浦添文化と東海岸の勝連文化の発達経路に差があったことや、軽視されてきた勝連文化研究の重要性も取り上げた。

 宇堅貝塚で弥生時代中期の土器と共に鉄斧(おの)やガラス小玉・丸玉が出土し、平敷屋トウバル遺跡では10世紀ごろの太刀の鍔(つば)が出土していることを挙げ、世界遺産の構成資産である勝連城跡の発掘遺物などを見ると、その重要さは明瞭だと強調した。

 70人余りの来場者からは「尚巴志を絡めた中城湾をめぐる航海の歴史の変遷や文化を知ることができた。素晴らしい講演内容だった」といった声が聞かれた。

(知花幸栄通信員)

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