第八十四回「褒められたいし、褒めたい」

最近、思うのです。

世の中の皆様、頑張りすぎではないですか?

ネットが普及して、いろんな声が上げやすくなった反面、その程度で音を上げてどうするみたいな空気も蔓延してると思うのです。

あの人はこんなに頑張ってるのに私は…

あの人はこんなにキラキラしてるのに私は…

と、誰かと自分を比べやすくなってしまっているのも一因だと思います。

SNSの中の世界が本当にあると思わないほうが良いです。なぜなら私は、SNSで見かけた美少女たちに現実世界で会ったことがありません。

そう、SNSはすべて虚構の世界!!(自戒を込めて)

このコラムを毎月楽しみにして読んでくださっている賢い皆様はもうお分かりだと思うのですが、やっぱり隣の芝生は青いし、人様の暮らしぶりって気になっちゃうし、全世界に配信しているからには精一杯キラキラしたものを切り出そうとしていると思います。

この「切り出す」という言葉は重要だと思っていて、アップする画像の中だけ綺麗な世界が写れば、あとは背景がゴミ屋敷でも全然OKなのがSNSの怖い世界(そう言えばそういう題材の漫画があったな)。

だけど人間の脳みそはおかしなもので、その一枚絵のキラキラしたものが、その人の住んでいるすべての世界が毎日毎秒キラキラしているかのような錯覚を植え付けてしまいます。

私自身もさぞ毎日の生活が充実していてキラキラしているんだろうなと思われがちですが、実際はぜーんぶ逆です。

当たり前に化粧がうまくいった日しか自撮りしないし、できればふとした他撮り写真には写らないようにしているし、可愛いケーキをカフェで注文したらそれはアップしますが毎日そんな可愛い食べ物を食べているわけないですし、なんなら毎日もやし炒めてるかサバ缶食べてるかのどっちかですし、仕事あるのに漫画読んでるし、仕事あるのに朝起きれないし、今このコラムを書いてる現状の服はバンドTシャツが部屋着にランク落ちしたものを着ているような状態です。

しかも、人に会わない日が続いたのでお風呂に3日入っていません! それが現実です。でもそれで良いのです。お風呂に毎日入るのってものすごく大変なことだと思います。なぜか異常なまでに美容に執着していた時期は「お風呂は毎日のエステタイム」などと言って1時間以上浸かっていましたが、いま思うとだいぶ疲れることをしていたな、と思うのです。

「こうでなくてはいけない」「こうあるべきだ」。そういう考えが頭の中を支配した時、私自身は異常なまでにそうであろうとする性質があって、さっきの美容もそうだけどジムに通ったりだとか、見た目に執着しだした時はけっこう無謀なダイエットとかしていたし、体型のこと、容姿のことを気にしすぎてノイローゼ状態になりました。

だってSNSの世界の女の子たち、みんな細すぎない? あと美容垢の子たち、意識高すぎてついていけないよ…と思った時にハッとしました。

私が一番虚構の世界に振り回されてるじゃん〜〜〜〜〜!!!

やはりこういう職業ですから、少しは人様に憧れられるような人でありたい。それが過剰になりすぎて本来の自分以上に頑張りすぎてしまったことがあって、ある時期から自分にもっと優しくしよう、と思っていろんな制限を付けることをやめました。

すると転がり落ちるのは一瞬ですね〜、先述したような人間があっという間に出来上がり。だけどそれも責めることなく、ま、いっか! で済まそうとしています。

なぜならやっぱり、人生は一度しかないから。一度しかないし、そろそろ終わりに近づいてきている気がしているからです。一日一日を大事にしよう、なんて言いません。そう思うと自分に厳しくなってしまうから。ただ、一日一日生き抜いた自分をたくさん褒めてあげたい、そう強く思うようになりました。

最近は自宅の玄関が見えると「ああ、今日も無事に自宅まで帰ってこれて偉い」と本気で思うようになったし、目が覚めるたび「今日も目覚めて偉い」と思えるし、何をするにしても「生きてるだけで偉いのに身支度して人に会って仕事までしてご飯もちゃんと食べて偉すぎる! 頑張りすぎでは!?」と自分自身をいたわるようにしています。

自分に鞭打つのも自分だし、自分に優しくできるのも自分。

さぁ、皆様も今日から自分の一挙一動を褒めてみませんか? きっと心が軽くなるはずです。

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